芝居は、自分の身体を通して表現していくもの。だから、作品のことをちゃんと理解し、咀嚼してからでないと、スムーズに身体が動いてくれないのだそう。
「本当は南の島でゆっくりしていたいタイプなんですけど(笑)、あれこれ考察しながら、作品と格闘することが嫌いではないんでしょうね。それに、人生でも仕事でも、苦難を乗り越えたり、手放したりした経験って、あとでだいたい表現の糧になったりする。いいことも悪いことも、一切の経験がムダにならないのは、俳優の特権かもしれないですね(笑)」
新しい仕事と出会うタイミングにも、意味があると思っている。もしこの作品に、20代のときに出会っていたら、今ほど深いところまで掘り下げられたかどうか怪しいのだとか。
「36歳のとき自ら死を選んだネリーは、自分の人生を賭して、私たちに問いかけているのかもしれない、なんて思います。“あなたは、どう生きるの?”と。でも、私自身はこれ、男性にこそ観てほしい舞台です(笑)」
女優は女優でも、舞台女優としての面白さはどこにあるのか。そう質問すると、彼女は笑ってこう言った。
「舞台は、一度ステージに立ってしまえば、あとは表現者である俳優に委ねられるものだから」(取材・文/菊地陽子)
※週刊朝日 2017年10月27日号