革新機構の預かりになるかどうかは定かではないが、半導体や複写機事業を手掛ける東芝テックも売却リスト入りする構想もある。

 シャープ、東芝が震源地となり、革新機構がにわか“駆け込み寺”と化している。なぜ、大企業の救済案件が集中しているのか。

●責任の所在が曖昧な官民ファンドが乱立している

 それは、国・行政主導で企業再生を担う受け皿が、他にないからだ。原点は、2003年に設立され、ダイエーの再建を手掛けた産業再生機構である。

 革新機構と同時期の09年に、金融庁主導でできたのが企業再生支援機構。日本航空などの支援を終えて、現在は地域活性化ファンドへ改組されている。二つのファンドの店じまいを経て、クローズアップされたのが革新機構だ。

 生みの親は、経産省エースの西山圭太氏(現東京電力執行役)。彼が提唱したのは、「オープンイノベーション」。個社ではなく、複数企業の技術開発を巻き込むことで、新産業の創出や産業再編を進めていく狙いがある。確かに、シャープも東芝も、他企業との提携ありきの絵を描いている。

 シャープは身の丈を超えた過大投資により、東芝は経営の機能不全により、危機に陥った。経営の失敗で沈没した企業を、国・行政が支援することは許されるのか。

 少なくとも、法律上は、大企業の救済が禁じられているわけではない。設立当初のもくろみと外れてしまったことがあるとすれば、ベンチャー投資が遅れたこと。投資件数こそ93件中71件がベンチャー企業で占められるが、投資金額では大企業向けがベンチャー企業向けの約2倍に及んでいる。

 むしろ、大企業であるJDIの上場益がファンドを支えている状態だ。霞が関では、「JDIのイグジット(出口戦略)が一つの成功モデルと見なされ、有象無象の官民ファンドが乱立するきっかけとなってしまった」(経産省幹部)。

 官民ファンドの最も本質的な問題は、巨額の税金投入に対する責任・リスクの所在が曖昧なところにある。つまり、金の出し手(政府)なのか、金を預かった人(革新機構)なのか、金をもらって経営している人(投資先の経営者)なのか、という議論だ。誰が責任を取るでもなく、独善的に支援案件が増えていく。

 米ゼネラル・エレクトリックが家電を中国ハイアールへ売却するなど、グローバル企業は事業の入れ替えを加速させている。国による延命が産業の新陳代謝を弱めることがあってはならない。

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