【YAYOI TOKYO】シェフパティシエ 大塚陽介(おおつか・ようすけ)/パティシエ辻口博啓氏のもとで4年間菓子作りの修業後、商品開発を7年担当。その後、京都のパティスリーや箱根の高級旅館の立ち上げにチーフシェフとして参加。23年に自社ブランドを開業(撮影/写真映像部・上田泰世)
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 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2024年6月24日号にはYAYOI TOKYO シェフパティシエ 大塚陽介さんが登場した。

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 2年に1度、イタリア・ミラノで開催される洋菓子の世界大会、「ワールド トロフィーオブ ペストリー アイスクリーム チョコレート(通称:FIPGC)」に日本代表として参加し、2017年にチョコレート、19年にケーキと砂糖造形菓子の世界チャンピオンに輝いた。

 パティシエとして20年間、商品開発から経営まで、さまざまな経験を積み、23年、ジェラートをメインとしたスイーツショップを開業した。

 ケーキや焼き菓子をメインとするパティシエが、ジェラートを選んだことに、周囲は最初、驚いた。しかし、そこには信念があった。

 飲食業界の労働環境は、かつてより改善されているが、まだまだ課題は多い。ジェラートという商材は、今までのパティシエの知見を生かしつつ、格段に製造効率が良い。課題解決に繋がると考えた。

 また、冷凍食品のため、生菓子と違い食材ロスもほぼない。さらに、形が悪く売り物にならない果物でも、ジェラートなら混ぜるので関係ない。フードロスに貢献したいという思いもあった。

 味へのこだわりは素材。農家に出向き、直接交渉する。

 イチゴをそのまま食べるなら天然の甘さが大事だが、ジェラートには酸味があるものの方が適している。パティシエの技術があるからこそ創り出せる、絶妙なバランス感を心掛ける。

 そして、世界的にもトレンドな日本食の“旨味”の要素を取り入れ、素材を生かす味を追求している。健康にも配慮し、油脂を極力排除した。

 家具職人として働いていた20代の時に、辻口博啓氏のケーキを食べて衝撃を受け、パティシエの道へと入った。

 師の教えである、茶道や華道があるように、「菓道」という険しい道を歩む中で、仕事仲間にもお客にも感謝の気持ちを忘れずに、自分自身が日々向上していくことを一番大事にしている。

 日本代表に選ばれ、通常勤務の後に朝まで練習する日々が1年間続いても、全力投球し続けた。

「ワクワクしながら作ると、お客様も喜んでくれるジェラートができるんです」

 夢は、四季を感じる日本の食材を使い、日本人の感覚だからこそできる、今まで誰も食べたことのないジェラートを作り、世界に挑戦していくことだ。(ライター・米澤伸子)

AERA 2024年6月24日号