「出版社とテレビ局」の問題という認識が広まってほしい
――鴻上さんは問題の本質を「出版社とテレビ局」とおっしゃっています。
原作者の中には様々な理由から『テレビ局側にお任せします』という人もいれば、全部チェックさせてほしい、変更はしないでほしいという人もいます。一方で、脚本家もプライドを持って作品づくりをしています。場合によっては原作を変更する必要があるかもしれない。どれが良いとか悪いということではありません。
問題は、出版社が原作者の意向をどのようにテレビ局に伝え、それをテレビ局が脚本家にどう伝えたのか。そして、原作者の要望と違う脚本が上がってきたときに、テレビ局はその理由を出版社にどう伝え、出版社はどのように原作者に伝えたのか、原作者を守ったのか。考えるべきはここにあると思っています。
――小学館と日本テレビはどのような対応を取るべきだと思いますか。
今回の問題で不安に思っている漫画家や、混乱している脚本家もたくさんいると思います。出版社もテレビ局も、これから先、漫画家や脚本家と友好な関係を築いていきたいのであれば、きちんと経緯を説明した方がいいのではないかと思っています。(このインタビューのあと、脚本家さんの文章が発表されました。その中に「私にとっては初めて聞くことばかりで、それを読んで言葉を失いました」という言葉があるのですから、テレビ局はちゃんと説明した方がいいと思います)
――この問題は今後どうなっていくでしょうか。
テレビ局の対応次第でしょう。今回の問題はわかりやすい「犯人」が出てくるようなものではない。ネット上では「犯人」や「敵」を見つけることに躍起になっている人がいます。私のXの投稿にも、きちんと読んでくれて、問題は「出版社とテレビ局」という意見に賛同してくれる人もいましたが、「脚本家が悪いに決まってるじゃないか」などというコメントもたくさんありました。
とにかく、一人でも多くの人に、今回の問題は「原作者と脚本家」の問題ではなく、「出版社とテレビ局」の問題だという認識が広まってほしいです。それだけでも大きな変化だと思っています。
(構成/AERA dot.編集部・唐澤俊介)