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手のひらサイズ、たった135ミリリットルのビール。一体誰が買うの?と思いきや、確かな需要がそこにはあった。AERA2023年9月11日号から。
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数多の銘柄がズラッと並んだビールコーナーで今夜のお供を選んでいると、かわいらしい小さな缶に目が留まる。手のひらに収まる超ミニサイズ。キリン、アサヒ、サッポロの人気銘柄がぎっしり陳列されている。ロング缶(500ミリ)やレギュラー缶(350ミリ)と比べグッと小さい。容量は135ミリ、小さなグラスにちょうど1杯。喉が渇いているときならば、誇張抜きに一息だ。
晩酌の500ミリを飲んだ後にもう1本500ミリを開けようか、いや、今日の2本目は350ミリで我慢しようかと葛藤する記者からすると、このサイズは用途がまるでわからない。
問い合わせ絶えない
もちろんこのくらいが適量という人もいるだろうが、グビグビ飲む印象が強いビールの特徴を考えると、それほど需要があるとも思えない。昔から、誰が飲むのだろうと気になっていた。
「売り上げに占める割合はわずかです。でも、欠品するとお客様からは『いつ入荷しますか?』と問い合わせの絶えない、底堅い商品でもあるんです」
と、キリンビール流通営業本部で量販店営業を担当する宮田純(きよし)さんは言う。キリンビールでは、看板銘柄の「一番搾り」と発泡酒「淡麗極上〈生〉」で135ミリ缶を展開している。
135ミリ缶の発売は1984年。ブームだったワンコイン需要に合わせてサントリーが「希望小売価格100円」で発売し、ほかの主要3社も追随した。ビールを少しだけ楽しみたい人、グラス1杯が適量という人にぴったりなのだという。
「『ビールは飲みたいけれど少しで十分』という方が多く購入してくださっています。量販店では購入頻度が高い高齢の方が手に取りやすいよう棚の低い位置に展開することが多いですが、若い方にも買っていただいています。売り上げの比率は小さくても、ブランド全体の構成のなかで欠かせない商品になっていますね」(宮田さん)
二十歳の記念に祖父と
記者の周囲に尋ねてみても、意外や意外、このサイズを愛飲している人がすぐに見つかった。
「普段の晩酌は焼酎。ですが、暑い夏は最初の一口、ビールを飲みたい」(50代男性)