若い頃からの悩みだった、白髪染めの製品にしたいと提案した。まずは、自分と同じ悩みを抱える人が多いのではと、市場調査を開始。結果は、思った通りだった。
お客に届けたい新商品の価値は、手軽にセルフカラーを楽しめること。シャンプー後、トリートメントをする感覚で、手軽に白髪を染めることができるのがポイントだ。
それを実現するためには、ボトルはプッシュしたら手のひらに液が出るポンプ式にする必要があった。
頭皮と髪に優しいヘッドスパで使われているクレイを配合。しかし、髪への密着性を上げて染毛効果を高めると、粘度が高まりポンプから出ない。トリートメント性を高めると染まりが悪い。トリートメント性を維持しつつ、お客への利便性のあるポンプ式を妥協したくなかった。
100回以上のテストを繰り返した。設定していた発売日に間に合わず、諦めてチューブにする方向も考えたが、会社が待ってくれた。発売後、2週間で増産。生産が追いつかないほどの売れ行きが続いた。何よりうれしかったのは、お客からの「簡単なのに、よく染まる」との声だった。
「お客様がワクワクする商品を届けたい」と、次は頭皮環境を整えるスカルプケアの開発に取り組む。開発への意欲はとどまることを知らない。(ライター・米澤伸子)
※AERA 2023年8月28日号