目を引くのは、背と両袖に秋篠宮家の家紋を入れた、三つ紋の訪問着である点だ。
天皇と皇族方は、それぞれの家紋を持っている。
天皇ご一家である内廷皇族は、十六葉八重表菊(じゅうろくようやえおもてぎく)。他の皇族は、十四葉一重裏菊(じゅうよんようひとえうらぎく)を用いる。
各宮家は、創設にあたり紋章(家紋)をつくる。
皇嗣家である秋篠宮家は、中心に十四弁の菊の花を置き、周りに横向きの菊花と秋篠宮さまのお印である栂(つが)の枝葉を四つずつ円形に連ねた意匠。
ご夫妻で相談しながら選んだという。
紀子さまらしい、華やかながら控えめな和装である。
だが、「染の聚楽」代表の高橋泰三さんは、ため息をつきながら戴冠式の様子を見ていた。今回の着物は、泰三さんが納めたものではないが、「染の聚楽」は、昭和の時代から皇室に着物をつくり納めていたこともある。
「日本の伝統文化を世界にアピールするよい機会ですから、和装をお召しと知り、楽しみにニュースを拝見したのです。お召しの着物は、手の込んだ刺繍はなく、染で細かな意匠を描いた訪問着でした。むしろ色無地の方が帯を引き立たせたかもしれません」
一方で泰三さんは、紀子さまの映像や写真を目にして驚いたという。
「着物業界の人間も同じ思いを抱いたようで、私のもとに何件も『紀子さまのお着物は、一体どうされたのか』と問い合わせがありました」
■着物を着こなす紀子さま
具体的に、どのあたりに違和感を持ったのか。
「真っ先に目についたのは、紀子さまの着物のたるみとよれ具合です。日本の新聞やテレビでよく使用された写真を見ると、歩く紀子さまの裾が妙にたるんで、よれています。裾も大きく崩れ、後ろがめくれています。和装の顔ともいえる袋帯も内側の袋の部分がぐんにゃりと生地がヘタっているようにも見えます」
紀子さまは、普段からよく着物をお召しで和装には慣れている。今回のように、歩くだけで足元が大きく乱れることはない、と泰三さんは首をひねる。