辻説法する稲盛和夫氏(2011年)
辻説法する稲盛和夫氏(2011年)

――どのような「考え方」をすればいいのでしょうか?

 己というエゴを常に制御し、いつも正しい考え方、道理に合った決断ができるよう心を整える努力を怠らないことです。リーダーは己を愛することが一番になっては駄目で、自己犠牲を払ってでも組織のために貢献しようとすべきです。

――この方程式の具体例を挙げてもらえますか?

 学力が高く優秀で、能力が90点の社員がいるとします。彼は、自らの能力を過信し、仕事をなめて、努力を怠っているので、熱意が40点、考え方も50点しかありません。すると、仕事の結果は掛け算となるので、18万点となります。一方、能力は50点しかない社員が、能力で劣る分、仕事に情熱を持ち、人の何倍もの努力を続けたとしたら、熱意が90点となります。さらに前向きで思いやりがあり、考え方が80点であれば、結果は倍の36万点にもなります。平凡な能力しか持たない社員でも、すばらしい考え方を持ち、懸命に努力すれば、信じられないほどの成果を生み出せるのです。

※週刊朝日  2013年9月27日号

 KDDIの設立や倒産した日本航空再建に手腕を振るってきた稲盛和夫氏。そんな稲盛氏流の部下の叱り方について話を聞いた。

*  *  *

――稲盛会長は部下をどんなふうに叱りますか?

 部下が間違ったことをすれば、人前であろうと、厳しくストレートに叱ります。若い頃、会社が成長し、部下が増えてくるにつれて、どう部下と接すれば良いのか悩んだことがありました。その時、本を読んで勉強もしましたが、やっぱり問題があるのなら、厳しく叱っていいのだと思うようになりました。これは、若い時から今日まで一貫して実践していることです。

――人前で叱るのは避けるべきだとの意見もありますか?

 周りに人がいるところで叱ると、その人のプライドが傷つくとか、周りからも色々な目で見られるからかわいそうだという声もあります。叱る側も、叱り方に気をつけなくてはいけないと言われますが、私はそうは思いません。必要な時は、たとえ人前でも、容赦なく、本気で叱ります。

次のページ
当時のJAL幹部はエリート意識が強く、私の言うことを素直に聞かず