音楽業界は、すべての国で金曜日を新作リリース日とする“世界的発売日”の導入を検討しているという。一年後の2015年7月から開始されるとの話もあるようだ。業界筋による話を、米ビルボード誌8月16日号が伝えている。

 メジャーレーベルやIFPI(国際レコード産業連盟)、RIAA(アメリカレコード協会)については決定事項だとする話もあるなか、まだ完全に決まったわけではないとの情報もある。各マーケットごとに発売日を決めさせる現在のやり方に代わり、業界が世界的発売日を設置しようとしている主な理由は、世界的な海賊行為を減らすためだという。

 オーストラリアでは現在、金曜が発売日となっており、それと同時に海賊行為がほぼ世界中に広がり始める。そのため、月曜発売のイギリスや火曜発売のアメリカのファンたちが合法的に購入する前に新作がネット上でシェアされてしまうのだ。

 マーケットごとに発売日が異なると、各レーベルは発売日に合ったマーケティング機会を活かしてアーティストたちを稼働させることができる。現在はまだ発売週にそれができているが、発売日当日に注目を集める露出をスケジューリングできる機会が少なくなる。

 情報筋によれば、デジタル音楽サービスのプロバイダーは金曜発売を望んでいるが、フィジカル(CDなど)の小売店は全てが変更に賛成しているわけでなく、インディーズのレーベルもしくは小売店のいくつかは、世界的発売日を金曜とすることを反対しているという。たいてい週の終わりにある給料日にほとんどの人が買いに来るものの、アーティストの熱心なファンは火曜に買いに来るため、彼らは週の初めに発売日を設定する方がCDのセールスが上がると考えているのだ。だが、結局のところ実店舗を持つショップやインディーズ・レーベルは、世界的発売日を何曜にすべきか決められないのかもしれない。

 あるレーベルの幹部は、「世界的発売日は業界にとって必要ですが、残念なことに、ビジネスの手法を変えることになるフィジカルの小売店にとっては不便になるでしょう」と話す。現在、1日で売り上げの3分の2を得ている小売運用に少なからず影響を与えるからだ。

 世界共通の発売日を準備するには、全当事者が関わってくるため相当の準備期間を要するだろう。また、フィジカルの供給ルートや世界の音楽チャートが変わることになるし、アメリカでは同じ火曜発売を採用しているホームビデオや書籍出版など、他のエンターテインメント業界にも影響を及ぼすことになりそうだ。果たして、他の業界も音楽業界に合わせて発売日を変えるのだろうか。