●働きたくても働けない、社会に参加できる支援を
仕事のない日はなるべく自宅から出て近所を自転車で走ったり、相談支援の事業所に顔を出して、プログラムに参加したりしている。正規雇用は考えていない。自分に合ったところで生きていく。だから、政府の支援プログラムにはこう感じている。
「支援から漏れてしまって、敗北感だけが残る人が出てこないか心配です」
政府の支援には、どこまで期待ができるのか。支援に取り組むNPO法人育て上げネットの工藤啓理事長(42)は言う。
「3年間の限定だが、取り組むこと自体に意味はある。働けていない方々を支援の対象に入れたことは特徴的だ」
ただ工藤理事長は、この政府の支援プログラムは基本的な設計が雇用政策であり、欠けている視点があるという。
「病気や精神的不調などですぐに働きたくても働けない人たちが存在する。この人たちの居場所を作らなければいけない」
働けないことで貧困と直面したり、社会とのつながりを持てなくなったりするケースも多い。
「彼らが力を発揮できる働き方が可能な社会、つながりたい社会をつくることと、そこに参加できるための支援が必要だと考えています」(工藤理事長)
正規雇用者を増やすことだけでなく、その「つながりたい社会」を見つけられるような支援、例えば、その「社会」に参加するための交通費の補助なども求めている。
12月10日、前出の不破さんや、自ら当事者でもあり、氷河期世代の雇用問題の調査などを手がけている「氷河期世代ユニオン」代表の小島鐵也さん(44)ら7人が内閣府を訪れた。担当者に要請書を手渡し、「最低賃金に代わる最低保証所得の導入」など5項目を求めた。小島さんは訴える。
「氷河期世代の問題はずっと置き去りにされてきた。雇用の確保と同時に、本人が努力したくてもできない場合、所得が少なくても困窮せずに生きていける仕組み作りを強く求めたい」
(編集部・小田健司)
※AERA 2019年12月23日号