「健康な人でも30分後には血糖値が140mg/dlを超えてしまう可能性があります」(牧田医師)
血糖値が上がると、セロトニンやドーパミンという脳内物質が分泌されて、一瞬ハイな気分になる。ところが膵臓からは急上昇した血糖値を下げるため、インスリンが大量に放出される。すると今度は血糖値が急降下、ハイな気分から一転、イライラしたり、眠気や頭痛、吐き気に襲われる。またハイな気分に戻りたくて糖質をとる悪循環だ。
空腹で口にした場合は、さらに影響は大きい。冒頭の男性が午前中、眠気に襲われたのは、エナジードリンクで急上昇した血糖値が急降下し、低血糖状態に陥った可能性が考えられる。
かつて「ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源」と喧伝されたこともあり、集中力を高めたいときにお菓子を口にしている人は多い。経理を担当している40歳の女性は「小分けになっているクッキーやチョコレートを常備して処理スピードが落ちてきたら口に入れる。脳に栄養が行き届くような気がする」と話すが、牧田医師はこう語る。
「たしかにブドウ糖は脳のエネルギー源ではありますが、集中力が続かない、いいアイデアが浮かばない、体がだるいといった場合、多くは糖分が足りないのではなく、とりすぎなのです」
健康診断の空腹時血糖値やヘモグロビンA1c(過去1~2カ月間の平均血糖値の状態)などに異常がない場合でも、糖質中毒に陥っている可能性はある。また、糖質のなかにも血糖値を急上昇させるものと、比較的ゆるやかに上昇させるものがある。ワースト度の高いものは、思い切って断つ覚悟も必要だ。最初はつらいかもしれないが、早い人なら3、4日で慣れ、甘いものが欲しくなくなってくるという。
体内時計のコントロールもまた、仕事のパフォーマンスを向上させるのには欠かせない。
時間栄養学研究の第一人者で早稲田大学先端生命医科学センター長の柴田重信教授は、午前中にパフォーマンスが上がらないのは、「社会的時差ボケを起こしている状態」と指摘する。
人間の体を構成する細胞の一つ一つには「時計遺伝子」が内蔵されている。1日は24時間周期だが、これらの時計遺伝子から成る体内時計の周期は1日24・5時間。つまりどんな人でも毎日30分ずつズレが生じている。さらにいわゆる夜型の人は夜遅く寝て朝もゆっくり起きるという体内時計を持っているのに、9時5時勤務といった社会生活に合わせて生活している。そのため午前中ぼんやりする、眠気がとれないといった症状が起きてしまう。
さまざまな研究から、社会的時差ボケが大きいほど学業が振るわない、身体活動が低いなど、パフォーマンスの低下に直結することが明らかになっている。柴田教授はこう続ける。