──「ハムレット」で心に響いた台詞はありますか。
なんだろう!(と、台本をめくると、すごい書き込み)「いま来るならあとには来ない。あとで来ないならいま来るだろう。いま来なくてもいずれは来る。覚悟がすべてだ」ですかね。この「来る」っていうのは「死」な気がして。フェンシングの試合を挑まれたハムレットが「ヤバい、これは死ぬかもしれない」と気づきつつも、腹を決める台詞。カッコいいなと思う。男が覚悟を決める場面とか台詞が好きです。
──菊池さんから見て、ハムレットってどんな人物ですか?
根っこのところでは強い人ではないと思う。王子としての威厳や責任感を保つために、剣の腕を磨いたり、理論武装したりして自分を守り固めていて。でも弱いところがあるからコミュニケーション力も巧みなんですよね。男にもモテる。王子なのにわざと自分を下げて、「僕こそ君のしもべにしてほしい」とか、男もキュンとするようなことをサラッと言ったりして。
──自分と似てますか?
理屈っぽいところは似てると思う。僕はここまで頭よくないですけど、理屈っぽくひねった返答とかするので、僕の進化版みたいな感じはあります(笑)。ハムレットは弱いところがあると言ったけれど、みんな弱い部分があって、それを隠すために、どんどんボタンを掛け違えて大きな悲劇が起きてしまうのがこの物語なんです。400年前も人間って同じなんだなぁと思うし、だからこそ愛され続けるんだろうなぁと。考えさせられることがたくさんあると思うので、自分と向き合いながら観て楽しんでいただきたいですね。
(構成/ライター・大道絵里子)
※AERA 2019年9月2日号