中強度の運動は、年齢や性別によっても異なる。
「20代では難なくできる運動も、40、50代には負担になることもある。中高年になって激しいスポーツに挑戦し、レベルが上がると『健康になっている』と過信してしまいますが、やり過ぎは病気の原因になる。『無理に続ければ体が生まれ変わる』ことはありません。私が目安としてすすめるのは、『歌は歌えないけど、何とか会話ができる程度の早歩き』です」(同)
長尾クリニック(兵庫県尼崎市)院長の長尾和宏医師(60)は目的が健康なら、走るより歩いたほうがよいと語る。
「ウォーキング中に倒れるリスクとランニング中に倒れるリスクを比べると、けた違いに後者が高い。体力のある人が歩くだけでは物足りなくなって走るのはよいですが、たいして歩いてもいない人がいきなり走るのはやめたほうがいい。一番怖いのは、突然死です。走ることは歩くこと以上に心拍数を上げます。年齢や持病の有無にもよりますが、心拍数が140以上になると、不整脈や狭心症が起きる可能性が高まります」
手軽にはじめられるのも、歩くのことのメリットだ。
「毎日欠かさず、小まめに走るということは、いろんな事情でできませんよね。ジョギングでも、一時的に夢中になってもやめてしまい、まったく体を動かさなくなってしまう人もいる。でも、歩くことなら毎日できる。1時間も歩くと“ウォーキングハイ”のようになってもっと歩きたくなりますが、次の日にしんどくならないように、そこでやめていただきたい。その代わり、毎日小まめに歩くことを継続してほしい」(長尾医師)
それでもテニス、サッカーなど、激しい運動を楽しみたいこともある。もちろん、それ自体は悪いことではない。
「生活の中で駆け足になったり、思い切りスポーツをやる日があるのも悪くはありません。やりすぎてバランスを崩すことが問題なのです」(青柳博士)
前出の坪田医師はこう語る。
「マラソンは体に良いか、悪いかと聞かれたら、やっぱり悪いかなと思う。ただ、年に数回マラソン大会に出て走る程度であれば、問題ないと思います。僕自身、5キロのジョギングからはじめて、3年かけてフルマラソンを走れるようになりました。マラソンは単なる運動ではなく、人生の楽しみにもなります。適度な負荷は体を強くします。走るであれ、歩くであれ、大切なのは、自分に合った負荷を見つけることです」
※AERA 2019年5月27日号

