09年9月の民主党政権への交代は、そんなうねりの末に起きた。
民主党政権は、「相対的貧困率」を政府が公表するなど、貧困の可視化に踏み出す役割は果たした。有期労働者が5年を超えて働くと無期雇用になれる労働契約法改正や、労働者派遣の規制強化が行われ、80年代以降規制緩和路線が続いた日本で初の労働の規制強化として注目された。
だが、首相だった鳩山由紀夫が沖縄・普天間基地問題でつまずき、東日本大震災と原発爆発が起き、野田政権下で、公約違反と批判された消費税引き上げが可決され、政権は3年で終わった。
続く第2次安倍政権は、アベノミクスによるトリクルダウンで格差を縮小するとして、異次元の金融緩和、公共事業、新しい産業の育成の「3本の矢」政策を掲げた。だが、労働者派遣法は15年に再び規制緩和路線へと改正され、18年には「働き方改革関連法」が成立したものの、非正規比率は38%に達し、実質賃金は低迷を続け、政策の手詰まり隠しともいわれる統計偽装が次々と発覚する。閉塞状態の中で、テレビでは「ジャパン・アズ・ナンバーワン」ならぬ「日本スゴイ」の連呼がまたしても繰り返されている。(文中敬称略)(ジャーナリスト・竹信三恵子)
※AERA 2019年4月8日号