元原子力委員会委員長代理・鈴木達治郎さん

 規制庁の職員は経産省など出身省庁に戻さない「ノーリターンルール」が適用されていますが、原発推進とは関係しない部署をワンクッション置いて出戻るなど、形骸化しているとの指摘も聞きます。やはりノーリターンルールを徹底して、自分たちのボスは規制委員長であるということをしっかりと認識してもらわなければなりません。

 もっとも、規制委は安全審査には厳しく臨むと言っていますから、安全規制の緩和にはつながらないと信じています。

 今回、原子力基本法も改正するという話も聞いていますが、私はとんでもないことだと思っています。基本法は原子力の憲法のようなもので、原子力の平和利用と民主的な運営、自主的な開発の3点をうたっています。

 12年に規制委を設置するときに基本法が改正され、2条2項に「我が国の安全保障に資する」という文言が入れられました。核物質の紛失や盗難を防ぐ核セキュリティーの役割について「安全保障」という言葉を使ったため、核兵器や原子力潜水艦への転用を視野に入れているのか、と国内外から懸念が表明されました。

 基本法を変えるということはそのくらい大きなことなのです。原発の運転期間の延長や、新型炉の事業環境整備に関することは、エネルギー政策基本法や電気事業法に書き込めばいいことです。基本法との整合性が必要というのなら、そのことを国民に明示して、きちんと議論するべきです。

(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2023年3月3日号

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