就活サポート事業のある自治体(AERA 2018年12月31日-1月7日号より)
就活サポート事業のある自治体(AERA 2018年12月31日-1月7日号より)
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 神奈川県横須賀市は、ひとり暮らしで身寄りのない市民を対象に、死後の手続きを支援する取り組みを行ってきた。それをきっかけに、自治体による終活支援が広がっている(表参照)。

 同じ神奈川県の大和市では16年7月に生活にゆとりのない人を対象に終活支援事業を始めた。葬儀などの生前契約をサポートするほか、事前に登録しておけば、死後に登録者の知人や親族などへ死亡事実や墓の場所などの情報を連絡してくれる。事業開始後、身寄りがある人や生活にゆとりがある人からの問い合わせが予想以上に多く、18年6月から対象を経済的な状況や別居の親族の有無を問わず、自身の死後に不安を抱えるすべての市民に拡大した。同市のおひとり様支援担当係長、増山博丈さん(42)によると、対象を拡大してからの半年間に140件を超える相談が寄せられているという。

『<ひとり死>時代のお葬式とお墓』(岩波新書)などの著書がある第一生命経済研究所主席研究員の小谷みどりさんは自治体による終活支援が広がる背景をこう説明する。

「引き取り手のない遺体は公費で火葬されます。生前契約をサポートすることで、本人が火葬や納骨の費用を負担し、行政にもメリットがあります」

 とはいえ、終活支援を行っているのはまだ一部の自治体だ。身近に頼れる親族がいないおひとり様はどうしたらいいのか。

 葬儀やお墓などの希望を実現するためには、死後の手続きをしてくれる人を決めて「死後事務委任契約」を結び、生前に費用を託しておく方法がある。託す相手は友人でもいいし、司法書士、行政書士などの法律家やNPOなどにも依頼できる。ただ、過去には生前契約した業者が破綻したり、公益財団法人やNPOが事前に預けていたお金を使い込んだりしたトラブルも起きている。小谷さんは言う。

「日本の福祉の対象は生まれてから死ぬ直前までで、死は家族や子孫が面倒を見るものとされてきましたが、家族のあり方が多様化する中、どんな人でも安心して死んでいける社会を目指す時期が来ているのではないかと思います」 

(編集部・深澤友紀)

AERA 2018年12月31日-2019年1月7日合併号より抜粋