FBで拡散されているヘイトスピーチは、「ミャンマーのムスリム人口は仏教徒を上回るようになる」といった宗教上の分断をあおる内容が多いという。
FBを通じて海外のテロリスト情報も入手し、ミャンマーがムスリムの「脅威」に直面していると信じる仏教徒も多い。バングラデシュに逃れた70万人余のロヒンギャには、「中東のお金持ちから1人当たり2千ドルのお金が支給される。彼らはそれを目当てに避難している」との根拠のない話も流されている。
国連は被害者や目撃者の証言から「女性が暴力的にレイプされて死に至り、遺体が軍車両で運ばれて埋められた」と報告書に盛り込んだが、FBには「レイプはなかった」との書き込みも目立つという。FBでは、「聞きたい情報」や自分のアイデンティティーを肯定する情報に流されがちになる。だが、と中西准教授は言う。
「FBを通じた交流は、労組のような社会運動にも活用され、市民社会を下支えする機能も果たしています。一概にFBがなくなればいいとも言えません」
一方、前出の日下部講師は日本との共通点を指摘する。
「ビルマ語も日本語も国内だけで流通する言語のため、外部コミュニティーの意見が入りにくい社会です。ミャンマーでもヘイトに反対する人たちはいますが、FBでバッシングに遭うのを恐れ、実社会でも反対意見を言いにくい状況です。日本と似ていませんか」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2018年11月19日号