今年起きた米中貿易戦争(AERA 2018年11月5日号より、国旗の写真:gettyimages)
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米中貿易戦争は株価にも影を落とす。10月25日、日経平均は大幅に値下がりした。世界経済の先行きに暗雲が立ち込める (c)朝日新聞社
米中貿易戦争は株価にも影を落とす。10月25日、日経平均は大幅に値下がりした。世界経済の先行きに暗雲が立ち込める (c)朝日新聞社

 米中貿易戦争の出口が見えない。トランプ政権との関税合戦で、中国経済には暗雲も立ちこめる。米中は「新たな冷戦」に入りつつあり、世界経済の先行きも見えない。日本企業には警戒感が広がっている。

【写真】世界経済の先行きに暗雲が立ち込める

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「もしある国が公平な貿易取引をしないならば、彼らに関税を課すまでだ」

 トランプ大統領は10月23日のツイートで、中国との交渉の道具として関税を使い続ける姿勢を示した。ホワイトハウスの経済政策の司令塔、ラリー・カドロー国家経済会議(NEC)議長も、22日の英フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで中国側を批判した。

「我々は彼ら(中国)に詳細な要求リストを渡しており、その内容は過去5、6カ月間基本的に変わっていない。問題は、彼らから全く反応がないことだ」

 トランプ政権は、中国による知的財産の侵害を理由に、7月に第1弾、8月に第2弾の制裁を発動。9月の第3弾時点で、高関税の対象は、中国から米国への昨年の輸入総額約5千億ドル(約56兆円)の半分にのぼった。第2弾までは企業同士で取引する電子部品やハイテク製品などが中心だったが、第3弾の対象は日用品など5745品目と幅広い。追加関税は、年内は10%分だが、来年から25%に引き上げる。

 中国側も引けない状況だ。米国による第1、2弾の制裁に対しては、同額の500億ドル分の米国からの輸入品への高関税を発動。対象には大豆を盛り込み、トランプ氏の支持者が多い中西部の穀倉地帯を狙い撃ちにした。第3弾に対しては、食品や液化天然ガスなど600億ドル分への高関税に踏み切った。

 米国が対中強硬姿勢を強める背景には、国際ルールにのっとらずに覇権国米国を脅かすまでに台頭してきた、中国へのいらだちと焦りがある。

 ホワイトハウスは今年6月、「中国の経済的侵略が米国と世界の技術と知的財産をどのように脅かしているか」と題する報告書を公表した。35ページの文書では、「中国の成長の大部分が、世界の慣習やルールを逸脱した、侵略的な行動や政策を通じて達成されてきた」と痛烈に批判。人工知能(AI)やディープラーニング(深層学習)、自然言語処理など、将来の安全保障の優位性にかかわる分野での中国の台頭にも不満をあらわにした。中国による知的財産侵害への不満は、オバマ政権時代から高まっており、党派を超えたものとなっている。

 トランプ政権発足当初は、米金融大手ゴールドマン・サックス元社長のゲーリー・コーンNEC前議長ら「国際派」が、トランプ氏の保護主義的な政策を何とか抑えてきた。

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