『リバーズ・エッジ』の中に登場する「平坦な戦場で、ぼくらが生き延びること」という言葉は、米国出身のSF作家ウィリアム・ギブソンの書いた詩の一節。『リバーズ・エッジ』はこの詩によって普遍的価値を得た(撮影/今村拓馬)
『リバーズ・エッジ』の中に登場する「平坦な戦場で、ぼくらが生き延びること」という言葉は、米国出身のSF作家ウィリアム・ギブソンの書いた詩の一節。『リバーズ・エッジ』はこの詩によって普遍的価値を得た(撮影/今村拓馬)
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漫画のハルナ(左)と公開中の映画の一コマ。私服に着替えて夜の河原へ集まる場面は、退屈な日常からの解放の象徴 (c)2018「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社
漫画のハルナ(左)と公開中の映画の一コマ。私服に着替えて夜の河原へ集まる場面は、退屈な日常からの解放の象徴 (c)2018「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社

 1980年代~90年代前半にかけて活躍した漫画家・岡崎京子。その同名漫画が原作の映画「リバーズ・エッジ」が公開中だ。行定(ゆきさだ)勲が監督し、二階堂ふみが主演を務める。20年以上前に描かれた作品がなぜ根強く支持され続けるのか、関係者とファンの声からノンフィクション作家・中原一歩氏が読み解いた。

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 映画「リバーズ・エッジ」で主人公のハルナを演じた二階堂は23歳。00年以降に社会人になった、いわゆる「ミレニアル世代」だが、原作を初めて読んだ時、いつか絶対にハルナを演じると心に決めたと話す。それは、ある映画の撮影の真っただ中のことだった。

「高校生の時、映画『ヒミズ』の撮影中に仲良くなったスタッフさんが原作を貸してくださって、読んだのがきっかけです」

 映画「ヒミズ」も同名の漫画が原作。01年から03年にかけて「週刊ヤングマガジン」に連載された古谷実の作品で、東日本大震災後の12年に、園子温(そのしおん)によって映画化された。

 孤独な人生を送るある中学生の、重苦しい日常と不条理な運命を描いた青春群像劇。母親は蒸発し、父親からの虐待に耐えかねた主人公は、衝動的にその父親を殺してしまう。主人公の夢は「普通に生きたい」だった。二階堂はこの作品で園に魅入られ、17歳でその才能を開花させることになる。

『リバーズ・エッジ』と『ヒミズ』。どちらも若者の「日常」を切り取った物語だが、「たとえ気だるくても、なんとかして終わりなき日常を生きよ」と説く前者に対し、震災後の世界を舞台にした後者は「そんな日常すら終わってしまったけれど、それでも生きなければ」とカタルシスを語る。偶然にも、『ヒミズ』に登場する主人公の家の前にも川が流れている。

 二階堂は自身にとっての青春とは何かという質問にこう答えている。

「当事者には分からないもの。その時は青春していると思っていても、後から振り返ると意外に友だちとダラダラしている無駄と思われる時間のほうが青春と思えます。言い換えるなら、大人にならないと見えてこないものですかね」

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