
アーサー・C・クラークが未来の都市生活を描くSF小説『都市と星』では、人とのコミュニケーションはアバターとのやりとりが主流だ。こうしたSFで描かれてきた、「現実を超える」バーチャルなコミュニケーションが実現しつつある。
昨年10月、アニメ映画「ゼーガペインADP」の公開前日、映画のプロデューサーやディレクターらによる座談会イベントが開かれた。
「この場面を作ったのは、実はこういうわけなんですよ」
映画を観ながら、映画の制作裏話を披露し、会場は約千人のファンで沸き立った。
この座談会の会場、実はバーチャルリアリティー(VR)空間だ。イベント会場や映画館といった会場をCGの3D映像で再現、そこに参加者のアバターが集まった。自身のアバターを操作することで、あたかもその場にいるかのように、会場を自由に行き来できる。
ネットに繋がったパソコンの画面のほか、VRヘッドマウントディスプレー(HMD)を使って誰でも参加できる。通常のイベントは会場の用意や準備のコストがかかる上、参加者も移動の手間がかかるが、VRなら自宅から簡単に参加ができる。
アバターは3頭身のロボットのような見た目で、顔には、利用者がツイッターなどで普段使っているプロフィル画像を使う。完全にリアルを再現しているわけではない。だが、
「人がコミュニケーションを取るときに重要なのが人との距離感です。クラスターでは、実際に会っているかのような人と人との距離感を感じられます。距離感が近いと、親密度が上がる。だから、VR空間上でもイベントで人が集まった時の熱狂感を感じられるんです」
と、このVRサービス「クラスター」を運営するクラスター(東京都品川区)CEOの加藤直人さんは話す。
こうした距離感だけでなく、対面で話している感覚までも再現するのが、コロプラ子会社の360Channel(サンロクマルチャンネル、東京都渋谷区)が開発した、VR空間に表示する自身のアバターに、本人の現実の表情や目線を映し出すシステム「FACE」だ。