
時代とともに言葉が生まれ、意味が移り変わっていくのは日本語も英語も同じ。それなのに、英語は高校や大学で学んだまま。この言い方で、ちゃんと伝わっているんだろうか……。そんな不安を抱えているあなた。単語選びやちょっとしたあいづち、発声で、あなたの英語は見違えるのだ。AERA 2017年2月6日号は、SNS時代に生まれた新しい単語、名スピーチに共通の「心を動かすポイント」と共に、「惜しい」英語からの脱却法を特集している。
トランプ米大統領の就任で時代は転換期を迎えた。私たちの日常にも変化は押し寄せる。就任演説の中に、激動の時代を英語で読むヒントがあった。
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就任直後の抗議デモが世界80カ国670カ所で起こり、480万人が参加したとされるトランプ米大統領。不人気ばかりが際立つが、英語が得意とはいえない日本人には、評価できるポイントが一つある。極めて分かりやすい英語で話す大統領だということだ。
就任演説もそうだった。
「再び米国を偉大な国にする」
トランプ氏の有名なキャッチフレーズで締めくくられた約16分の演説は、日本の中学英語を習得していれば、おおよそわかる。それが高校英語なら相当程度理解できるほど、基礎的な英単語で組み立てられている。
米国民のみならず、全世界がその一言一言に注目する米国大統領の演説は通常、選択する言葉を何度も吟味しながら、構成のプロであるスピーチライターが起草する。過去の偉人の言葉や格言を引用しつつ、時におしゃれで芸術的。高級感あふれるウィットに富んだ演説に、観衆は「偉大だ」「すばらしい」と感激し、引き込まれる。
ところがトランプ氏の演説は違う。ゆっくり話すことも加わって「とても分かりやすい」のは間違いないが、余韻が残らない。スピーチライターはいるのだが、会見も演説も、即興タイプのトランプ氏の言葉を最大限に生かしている。日常会話がそのまま演説になってしまうのが、トランプ英語の特徴だ。
今後、もし演説内容が難しくなることがあれば、それはトランプ氏が他人の助言を受け入れるようになったときだ。