●あの経済成長を再現してほしい
つい最近まで長年クリントン支持だったが、サンダース支持に鞍替えしたのは、ギルバート・ラミレズ(41)だ。
「予備戦の勝利がもう決まったかのように語り、バーニーとのテレビ討論を拒否したヒラリーを見て失望した。この人は大統領になってしまえば、もう闘う気なんかないんだと思った」
貧富の差の是正を強く望む彼は、サンダースを支持することで、クリントンに圧力をかけ、本選では彼女にリベラル寄りの政策を確約させたいと語る。
対するクリントンは、オレンジ郡の労働組合の本部で演説を行った。スペイン語の歌詞の音楽が会場に流れ、ヒスパニック系の支持者の多さを物語る。スーツ姿のスタッフがテレビ画面に映りそうな支持者らに星条旗を手渡し、小旗の効果的な振り方まで指導する徹底ぶりだ。
「トランプには米軍の最高司令官など務まるわけがない」
と批判を放つクリントン。オサマ・ビンラディン殺害作戦時に国務長官を務めた彼女が、
「ビンラディンを確実に殺すには、ミサイル攻撃ではなく、海軍の特殊部隊のネイビー・シールズを送るべきだとオバマ大統領に助言したのは私だ」
と語ると「ワー!」と大歓声が起こった。女性というカードも使いながら、同時にテロ犯を確実に仕留めるタフさを強調。そんな彼女を支持する労働組合員のイルマ・バレラは言う。
「ヒラリーにはビルがついている。ビル・クリントンが大統領だった頃の景気は最高だった。あの経済成長を再現してほしい」
現在、獲得した代議員数でリードしているクリントンは、もしカリフォルニア州を落としても民主党の指名候補を勝ち取る可能性は高い。サンダースとのテレビ討論を避けるなど、勝者気取りのクリントンに対し、トランプは、自身とサンダースとの1対1のテレビ討論を提案。サンダースは「受けて立つ」と公言。トランプはその後「やっぱりやめた」と提案を翻したが、その一連のやりとりを見た前出のラミレズは言う。
「トランプのこの絶妙のエンターテイナーぶりだけは憎めない。うちの母親がトランプに夢中になるのも少しわかるよ」
(ジャーナリスト・長野美穂[米国])
※AERA 2016年6月13日号