アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はジョンソン・エンド・ジョンソンの「ニッポンの課長」を紹介する。
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■ジョンソン・エンド・ジョンソン 東京サイエンスセンター センター長 後藤肇克(49)
10台の手術台が整然と並ぶオペ室に、「骸骨」が運ばれてきた。
「じゃあ、チャッピーはそっちに置いて」
え? チャッピー? 思わず尋ねると、
「ああ、この人体の骨格標本の名前です。名前があった方が分かりやすいでしょ?」
後藤肇克が笑いながら説明してくれた。
昨年8月にオープンした東京サイエンスセンター(川崎市)は、医師らに医療機器の安全で適正な使い方を知ってもらうためのトレーニング施設だ。腹腔鏡手術をはじめ、脳神経外科や循環器内科などで使う最先端の医療機器を用いたプログラムが用意されており、週に約200人の医療従事者が訪れる。
後藤はセンター長として、施設の管理運営を任されるだけではない。医療機器について医師らとある程度対等に話せる医療の知識を持ち、より実際の手術に近い環境でトレーニングが受けられるように考えている。チャッピーを使うことも後藤が考え出した。
「製品の取り扱いに習熟してもらえれば、患者さんが高度な治療を安心して受けられる。日本の医療の底上げになればうれしい」
酪農学園大学酪農学部を卒業後、1990年にジョンソン・エンド・ジョンソンに入社。外科系の手術全般に使われる医療製品を扱う事業部に配属された。それから23年間、3年間の東京勤務を除いては、札幌で営業マンとして過ごしてきた。今年1月に、東京サイエンスセンターのセンター長に任命されたのは、まさに青天の霹靂だった。
「びっくりしましたが、新しいことにチャレンジできる環境なので楽しい」
40人ほどのチームを束ねる。20~30代と若い人も多く、風通しのよい環境づくりを大事にしている。
札幌時代、年70回は行っていたゴルフにもなかなか行けないほど忙しいが、後藤の目は未来を見据えている。
「近い将来、年間500人は海外からのドクターも受け入れられる環境にしたい」
(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(編集部・大川恵実)
※AERA 2015年11月16日号