停戦合意の監視や、人道援助をするNGOの保護を主な目的とし、中立性を重んじてきたPKOは大きく変質しました。ルワンダで1994年に起きた大虐殺を、現地のPKO部隊が防げなかったことがきっかけです。議論の末、「住民の保護」がPKOの最優先の任務になりました。コンゴ民主共和国には、武装勢力を攻撃して「無力化」する任務を課された部隊が置かれました。PKOが戦闘の当事者となる可能性は格段に高まっているのです。
安保法制ができれば、自衛隊のPKOについても任務の幅が広がり、「駆けつけ警護」や現地の治安維持を担えるようになる。自衛隊が戦闘の当事者になる可能性はさらに高まります。
そこで考えなければならないのは、「自衛隊員が現地の一般市民を殺すリスク」です。戦う相手は正規軍ではない。現地の武装勢力の民兵は地元住民に紛れていることも多い。「戦闘員か非戦闘員かは相手が撃ってくるまで分からない」のが、そうした戦場の常識です。実際、PKOではありませんが、イラクやアフガニスタンでは米兵などが一般市民を誤って射殺する事件がたびたび起きています。
私は2000年に、東ティモールのある県でPKO部隊や軍事監視団などを統括する役職に就きました。この時、ニュージーランドの部隊が武装勢力に襲われ、1人が両耳を削がれ惨殺される事件がありました。弔い合戦のような雰囲気になり、700人以上が総動員で目撃情報をもとに武装勢力を追い詰め、十数人全員を射殺しました。武装勢力とは交戦状態にあり、合法的な軍事行動でしたが、射殺した相手がすべてメンバーだったかどうかの確信は持てませんでした。
※AERA 2015年7月20日号より抜粋