毎月のように電気も携帯も止められ、私の「劣等感」はどんどん膨らみ続けるばかり。仮にもしまかり間違って「女装」で成功したあかつきには、しかと社会に「罪滅ぼし」をして、「勝手させて頂く代わりに、国民として義務としきたりをまっとうする」というのが当時の目標でした。オトナとして超低レベルな願い。なので、今でも私にとって『納税』と『NHK受信料の支払い』は生きる悦びです。綺麗事でも何でもなく、それらは私が辛うじて「この国の国民でいさせて貰える」と安心できる数少ない根拠なのです。
私の考える「社会人」とは、例えばNHKの受信料のように「できれば遠慮したい」と思うような「務め」にも、文句を言わず従うことができる人。今週は、自分が好きで選んだリベラルな生き方に対して、極めて保守的な考えを持って暮らしている人もいるよ、という話でした。
※週刊朝日 2019年8月30日号
【週刊朝日編集部からのお知らせ】
いつも『アイドルを性(さが)せ!』をご愛読くださり、ありがとうございます。この連載は2016年5月から週刊朝日で始まりましたが、このたび書籍化して、単行本『熱視線』(本体価格1400円)として発売されました。連載の内容を大幅に加筆修正し、ミッツさんご自身が描いているアイドルの似顔絵(AERA dotでは未掲載)も収載しています。装丁にもこだわりました。毒と愛を込めて作った一冊です。ぜひ、紙の本でじっくり味わってお楽しみください!