萩尾:いやいや、そうでもないです。編集から「第2部を描いてよ」という要望で、1年後ぐらいに第2部みたいなのを描いたんですけど、最後にアランを消しちゃったものですから、自分の中では終わったつもりだったんです。でも、「続きを描いてください」「そのあとどうなったんですか」っていろんな人に聞かれるんです。
林:ええ。
萩尾:そのうち作家の夢枕獏さんと知り合って、獏さんが「萩尾さん、『ポーの一族』の続きを描いてよ」って会うたびにおっしゃるんです。あの人、甘え上手ですね。柔らかい感じで「ボク、読みたいなあ」って。「ほだされる」ってああいうことを言うんでしょうか(笑)。獏さんがそう言うなら描いてもいいかなと思って。
林:それで40年ぶりに続編をお描きになったんですね。
萩尾:はい。続編を描いたときもう60歳を超してたので、発表するのがコワくて、エドガーの顔もぜんぜん違ってるし、「夢がこわれた」とか読者からお叱りが来るだろうなと思ったんですけど、けっこう皆さん喜んでくださって。
林:すぐ売り切れちゃったんですね。
萩尾:小学館の「月刊フラワーズ」に掲載したんですけど、すぐ売り切れて、雑誌にしてはめずらしく重版がかかりました。
林:そして今も断続的に続いてるんでしょう?
萩尾:はい。自分でも驚いたんですけど、描き始めたらすごく楽しくて、キャラクターが勝手に動いてくれるんですね。これまで「あんたたちは出番が終わったのよ」という感じでどこかに閉じ込めていたのが、ドアを開けてみたら「待ってたよ」って出てきたという感じで、「みんなゴメンね、放っておいて」という心境になっちゃいました。
(構成/本誌・松岡かすみ)
※週刊朝日 2019年7月26日号より抜粋