シム:私は東京新聞社に行って、実際に記者の方たちと話すことができたんです。どうやって新聞ができあがるかを知り、とても参考になりました。特に記事を書くまでに想像以上に長い時間や調査が必要だとわかって、そんな記者の粘り強さや根気を演技に込めました。記者を描いたほかの映画も参考にしました。特に役に立ったのは、取材の内幕を記者の目線で描いた「スポットライト 世紀のスクープ」(米国、2015年)です。「新聞記者」で描かれている話は、世界中で起きていることでもありますから。

――19年発表の「世界の報道の自由度ランキング」(国境なき記者団)によると韓国は180カ国中41位、日本は67位だ。映画に出演してからよりニュースを注意深く見るようになった、と2人は声をそろえる。

シム:私は俳優としても人間としても世の中でなにが起こっているのかをちゃんと知ることが大事だと思っています。時間があればニュースもチェックしてました。でもこの映画に出て、フェイクニュースやネットニュースに書かれるアンチコメントなど世の中にさまざまな情報があるなかで私たちが本当に信じるものは何なのか、考えさせられました。

松坂:本当にそうですよね。いまは本物も偽物もあらゆる情報が簡単に目や耳に入りやすく、しかもそれをうのみにしやすい傾向がある。だからこそ誰かの意見に同調して批判したりするのではなく、しっかりと自分の目や耳で判断し、自分の考えや意見をしっかりと持つことが大事だなと僕も実感しました。それにSNS社会では最終的に「何も言わないこと」が一番無難な選択肢になってしまう。だからこそ、こういう作品が必要なのかなと思います。

シム:そう、見ながら「自分だったらどうするか」と考えられると思うんです。

――シムさんは、撮影前から1年ほどで日本語をマスター。取材もほぼ通訳なしで行われた。

松坂:シムさんの日本語、本当にすごいですよね! 撮影中も普通に会話ができたので、びっくりしました。

シム:まだまだです。外国語はネイティブと話すことが一番。日本での仕事が始まってから日本の事務所の方と話してレベルアップしようとしていました。

松坂:日本語のセリフはどうやって覚えたんですか?

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