ジャーナリストの田原総一朗氏は、政治家たちの“理念喪失”を指摘する。
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4月5日に塚田一郎国土交通副大臣が「忖度した」という発言で引責辞任し、10日夜には桜田義孝五輪相が「復興以上に大事なのは高橋さんだ」と、高橋比奈子議員のパーティーであいさつしたことで辞任した。事実上の更迭である。
それにしても、自民党の責任ある議員たちのとんでもない失言が相次いでいるのはどういうことなのか。
野党が弱く、安倍一強が長く続いているために、自民党議員たちの神経が緩みすぎているのではないか。
いや、神経が緩んでいるだけではなく、実は、この国がどうあらねばならないかという、政治家が当然持たなければならない理念を失ってしまっているのではないか、とさえ思われる。
たとえば、安倍首相が憲法を改正したいと強く表明した。そして、憲法改正のための自民党の担当者たちが定められた。そこで、責任者の一人に私は「現在のような状況では憲法改正は無理だよ」と言った。
本気で自民党が憲法改正を考えているのならば、国会議員たちが選挙区に入って、選挙民たちに「憲法改正をすべきです。憲法を改正すれば、この国のこういうところがこのようによくなります。そして国民の皆さんの生活がこのようによくなります」と具体的に説明して、説得すべきである。
ところが私が捉えているかぎりでは、自民党の議員たちの多くが、憲法や安全保障の問題から逃げているとしか思えない。
怖いのだろう。
しかし、自民党の議員たちが憲法から逃げていて、国民が賛成するわけがないではないか。
私がこのように問うと、まったく反応がなかった。
要するに、本気で憲法を改正する覚悟はない。安倍首相から言われたからやっている形をとっているのではないか。
そして、理念を失うと、党から公認されて議員に当選し、なるべく早く党のいずれかの役職に就き、大臣になりたい、という願望しか持たなくなる。