ヴァシュロン・コンスタンタンではソファでシャンパンを飲みながら選ぶというが……。這々(ほうほう)の体で逃げ帰り、ビールと煮込みで気持ちを落ち着けた。後日、改めて同社に取材依頼をしたのである。
快く扉の奥を公開してくれたヴァシュロン・コンスタンタンは、スイス・ジュネーブに本社を置く。創業は1755年で、現存する最古の時計メーカーといわれる。銀座の店舗では今年、税込みで1億円近い腕時計が売れた。2階には応接間があり、客はソファに座りシャンパンを飲みながら、納得いくまで品定めするという。
「日の出や日の入りの時間などを表示したり、うるう年の時差を自動的に修正したりする機能があって、部品数が多いものほど高額になります。200万円クラスのものなら部品数は98ですが、5000万円近い商品では457にもなるんですよ。ちょっとした部品の面取りに手作業で1週間かけたり、奥のほうの見えない部分にも装飾を施しています」(広報担当者)
無粋な記者でも、多くの製品を見続けるうちに、超高額なものと、さほどでもない(!)ものとを区別できるようになってきた。不思議なものである。(取材・文/本誌・菊地武顕)
※週刊朝日 2018年11月30日号
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