旅行作家で編集者の吉田友和さんとライターで編集者の松岡絵里さんは、新婚旅行で607日かけて世界一周した夫妻だ。帰国してから妻はフリーランスとして働き、夫は元の出版社に再雇用され、サラリーマン生活に戻った。だが、一度火のついた「旅行熱」は収まらない。
※「結婚よりも世界一周がしたかった? ある編集者夫婦の場合」よりつづく
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夫:帰ってすぐに「また行きたい」「もっと行きたい!」と思うようになったんです。でも当然、平日は仕事があるので、なかなか思うように行けない。
妻:私はフリーランスとして雑誌の旅行ページを書く仕事をしたり、けっこうあちこちに行けたので、割と旅行欲は満たされていたんですけどね。
夫:僕は仕事の合間に週末2泊3日で一人で旅行するようになったんです。それが『週末海外!』という本にまとまった。その後も旅行作家として個人の仕事がどんどん増えていった。それで2010年にフリーになる決心をしました。
妻:すごく思い詰めた感じで「……会社、辞めようと思うんだ」って言われたのを覚えてる。私は「まだ二足のわらじでがんばってたんだ? 早く辞めちゃえば?」って感じで(笑)。
夫:ちょうど彼女が逆にフリーをやめて、船旅雑誌「CRUISE」で編集者として勤務し始めていたんです。だから交代したという感じでした。
――二人ともライター・編集者であり、同じ「旅」というテーマを扱う、いわば同業者。やりにくさはないのだろうか?
夫:特にないですね。基本的にお互い協力体制で、「この場所の写真、持ってない?」とかよく言われます。
妻:結婚したときから一緒に仕事し始めたようなものなので「慣れ」かも。
夫:それにお互い、あまり突っ込まないようにしてるよね。相手の原稿のチェックとかもするけれど、あまり細かくいろいろ言わない。
妻:協力をしてほしいときは申請する、それ以外は口を出さない、みたいなものが不文律としてある。
夫:たまに「この場所、僕行きたかったのに、先に行かれた!」っていうことはありますね。