■重要文化財 仙人掌群鶏図襖
伊藤若冲筆
江戸時代・18世紀 大阪・西福寺蔵
金の地に躍動する鶏、その左右には異国をイメージさせるサボテンが描かれた、色あざやかな作品。右端に描かれている鶏とサボテンは、次に紹介する自作「雪梅雄鶏図」の模倣だ。雪が積もる「く」の字に曲がった梅の形を、群青色の奇妙な形の岩に見ることができる。「『仙人掌群鶏図』は75歳の作とされ、着色画の特徴である細密な描写と、水墨画のデフォルメが融合した、若冲が描く鶏図の到達点ともいえる傑作です」(佐藤さん)
■雪梅雄鶏図
伊藤若冲筆
江戸時代・18世紀 京都・両足院蔵
若冲の比較的初期の作品で、当時住まいも兼ねていた京・錦小路のアトリエで描かれた。緻密な筆致や、梅や鶏冠の赤など独特の色彩感覚が、この頃すでに身についていたことがうかがえる。「若冲は、すでにある自身の作品を再利用して創造する表現手法にたどり着き、生涯を通じて同じモチーフを何度も繰り返し描いています」(佐藤さん)
■重要文化財
湯女図
江戸時代・17世紀
静岡・MOA美術館蔵
展示期間:4月13日~5月13日
京や江戸で流行した湯屋で働く6人の女性を描いた作品。絵の外に強い視線を送る女性がいることから、この右側に絵が続き、そこに描かれた人物と相対する屏風画の一部と考えられる。「生き生きとした女性の肉体を感じさせる描写や、交わされる視線による広がりが、この『湯女図』を魅力的なものにしています。左端の振り返るふたりの女性の姿は、『見返り美人図』に取り入れられたと思われます」(佐藤さん)
■国宝
風俗図屏風
(彦根屏風)(部分)
江戸時代・17世紀
滋賀・彦根城博物館蔵
展示期間:5月15~27日
彦根藩主井伊家に伝わる近世初期の風俗画で、京の遊里を描いた作品とされる。「犬を連れている女性に注目すると、『湯女図』や『見返り美人図』とつながる、振り返る女性の系譜が見えます」(佐藤さん)。絵全体の主題は、中国で士大夫が身につけるべきものとされる琴と碁と書と画の四芸は、現実の世界ではすでに高尚なものでなくなったことのアイロニーである。当時、中国的なテーマを描くのが人気であった
●創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年
特別展「名作誕生─つながる日本美術」
4月13日(金)~5月27日(日)東京国立博物館 平成館(東京都台東区上野公園13−9)
(構成・文/本誌・鮎川哲也)
※週刊朝日 2018年3月16日号
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