テレビというのは洗練されたら終わるメディアです。虚栄や見栄や誇張といった『カッコつけ』があるからこそ、全国の人たちがそこに夢を錯覚し、使い古された『様式美』があるからこそ、そこに習慣性や大衆性を見いだせる。時代が進み、もはやテレビの用途も変わってきているのかもしれませんが、私のような奇天烈な存在も様式美の上に成り立って初めて『日常』になる。
ではなぜ中山秀征なのか? その鍵は歌手・中山秀征にあります。かつて『第二の吉川晃司』としてアイドルデビューしたヒデさん。今もって『アイドル歌手』という原点や主軸が、彼の『カッコつけ美学』に結びついていると推察できます。先日、50歳を記念してコンサートを行ったヒデさんですが、全身から溢れる『往年のアイドル像』。ザッツ様式美! このブレなさ加減こそ『性』であり、今やそれが当てはまるのは松田聖子か中山秀征だけと言えるでしょう。
ヒデさんのデビュー曲『明日にONE WAY』(86年)を是非ご覧頂きたい。彼の唄う姿には、「東京は夢を掴める憧れの街」「ブラウン管は近くて遠い夢の箱」というテレビの本懐が詰まっています。実用性や責任ばかりを意識してないで、テレビはもっとカッコつけないと。
SNSの方が虚像化するばかりじゃ、オジさん退屈です。
※週刊朝日 2017年9月29日号

