悪魔の724号室──。秋の夜長に永田町界隈で失笑含みに囁かれている「怪談」だ。というのも、衆議院第一議員会館724号室の主は「このハゲー」発言の豊田真由子衆院議員。そして第二議員会館では、不倫疑惑の渦中にいる山尾志桜里衆院議員だからだ。「な(7)に(2)よ(4)!」と読めると語り草になっているいわくつきの部屋なのだ。
急転直下の失脚劇だった。山尾氏は子どものころに人気ミュージカル「アニー」で主演し、東京大学法学部卒の元検察官という才媛だ。華麗な肩書と美貌を備えた民進党次世代の「顔」。2回生ながら政調会長経験者で前原誠司新代表体制下の幹事長にも内定していた。しかし、政策ブレーンの倉持麟太郎弁護士との不倫疑惑が報じられるとわかると、人事は白紙になり、山尾氏は9月8日、あえなく離党した。会見では弁護士との男女関係は否定しつつも、「誤解を生じさせるような行動で迷惑をかけた」と釈明。倉持弁護士も、同じく男女関係を否定しつつ、謝罪のコメントを出した。
山尾氏を一躍有名にしたのは、待機児童問題をつづった匿名ブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」を取り上げた国会での論戦だった。子育て世代の代弁者として容赦なく安倍首相を追及する姿は共感を呼んだ。
山尾氏は本誌が昨年末、企画した野田聖子・現総務相、金子恵美、三原じゅん子両議員との「国会議員女子会」に参加。大先輩の野田氏を前にしても「タメ口」で割り込み、待機児童問題などを訴えた。この対談で山尾氏は女性の抜擢についてこう話した。
「いまは政治でもビジネスでも力ある女性の登場が期待されています。それでもなお、稲田朋美さんが防衛相、蓮舫さんが民進党代表の地位に就いたとき、『お手並み拝見』といった空気をヒシヒシと感じた」
異例のスピード出世を果たした山尾氏だったが、民進党幹部はこうもらす。
「うちの党は甘やかしすぎだ。男だったら2回生で政調会長、幹事長はあり得ない。もっと雑巾がけをさせてから要職に起用したらよかった。若手には慕われていたので残念です」
10月22日には、新体制の試金石となる青森4区、新潟5区、愛媛3区の衆院トリプル補選が控える。政治アナリストの伊藤惇夫氏は言う。
「愛媛3区の事務所開きに駆けつけ、とんぼ返りで弁護士と密会と報道された。党としても、それをやられたらたまらない。補選で負ける可能性は高くなった」
別の民進党幹部も嘆く。
「若手女性論客として、反転攻勢の起爆剤になるはずが、見事にずっこけた。補選もこのままでは3連敗だろう。把握している中で数十人の離党予備軍がおり、解党まっしぐらかもしれない」
民進党と山尾氏に「トゥモロー」はあるのか。(本誌・直木詩帆、村上新太郎)
※週刊朝日 2017年9月22日号