私は、60代の男性2人に熱弁をふるっているA代さん(76)の隣に座り、話を聞いた。行政書士の夫を3年前に亡くし、娘の勧めで1年前に入会した。

「『この年でもいいですか?』と聞いたら、『まだ上にいますよ』と言われたから、安心して入ったんです。夫がいなくなってから、外に出られなくなって、鬱(うつ)になりそうでした。80歳近くになって独り暮らしをしていると、涙が出るのよ。一人で生きることは辛いわねぇ」

 A代さんは白い肌にしっかり描いた眉を下げた。娘は米国人と結婚した。「面倒を見てくれる?」と娘に尋ねたら、即座に断られた。娘がA代さんに婚活を勧めたのは、そんな理由だったのだ。

「自宅でテーブルを動かすのも、電球を替えるのも一人。身近に信頼できる人が必要だと思って参加してるけど……」

 年下の男性が席に着くたびに、A代さんは夫との栄華時代の自慢話をする。年金暮らしの婚活男性たちは、体ごと引いていた。A代さんに見合う男性はいないだろうが、懇親会に毎月参加すれば、少なくとも社会とのつながりは保てる。

 一方、今回最も若い55歳のB子さんは、DV酒乱で、女と失踪した夫と6年前に離婚した。

 勤続30年、事務職をしながら一人息子を大学院修了まで通わせた。

 孫が2人いるB子さんは、「女一人で寂しいから」と年に数回、懇親会に参加する。

「離婚した時に、寂しさに押し潰されて死んじゃうんじゃないかと思いました。ポッカリ開いた穴を埋めたくて会員になったけど、時間が経って、それが穴ではなくて傷だって気づいたんです。傷を埋めるために男性を求めるうちは、理想の人が見つからないとわかっているけど……」

 実はB子さんは、今回参加しているC男さん(59)と5年前に懇親会で出会い、3回デートをした。ところがC男さんは、子供が欲しかったので、進展しなかった。いまだ懇親会に参加し続けるC男さんは、最近子供をあきらめたそうだ。

 C男さんは自動車会社勤務で、定年後も5年間働ける。髪は極薄だが清潔な印象で好条件とB子さんは再びC男さんを狙っている。

「条件のいい人って氷山の一角。だから婚活しなきゃ相手は見つからない。でも、若い女(こ・40代)に殺到するから、相手探しが難しいんです」

 B子さんには登山を楽しむ男友達はいるが、求めているのは、人生を共にできて、B子さんの収入を頼らない男性という。

「独身になって自分の時間を自由に使えて世界も広がったけど、やっぱり一人は寂しいですよね」

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