同じように亡妻の服を傍らに置いて自慰にふけり、心筋梗塞で死んだ60代の男性もいたという。62歳の女性ではこんな例も。
「畳に下半身裸で仰向けに倒れていた。足を少し開いて、股の間に何かがはさまっている。よく見るときゅうりのヘタで、膣に実がすっぽり入っていた。オナニー中にくも膜下出血で死んだんです。また、コタツの足が入ったままの人もいました。このケースは第一発見者が息子でした。ショックだったと思います」
上野さんによれば、一般的には性交や自慰中の死の要因は、男性では冠状動脈の硬化のために起こる心筋梗塞が多く、女性では脳出血が多いそうだ。
「そもそも動脈硬化のほか脳動脈瘤、高血圧など潜在的疾患を持っている人が、環境的興奮に加えて性的興奮と消耗が一気に負荷されると死に至ることがある。高齢者で多いのが、少しお酒を飲んでいつもと違う場所や雰囲気でした場合ですね」(上野さん)
重要なのは持病があるかどうか。それが生死の境になるという。上野さんが検視したある男性は、ストリップ劇場のトイレで自慰中に心臓発作で死んだ。心肥大でセックスを医師から禁止されていたが、欲情を抑えきれず自慰をして、命を落としてしまった。
「俺は元気だと豪語して健診にも行かず性欲を満たす高齢者は注意が必要。“自慰死”を防ぎたければ自分の潜在的疾患を把握すること。自制しながら性とつきあうしかない」(同)
※週刊朝日 2016年5月6-13日号より抜粋