アンリリースド・アーリー・デイズ1947-1957
アンリリースド・アーリー・デイズ1947-1957
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1957年の《ネイチャー・ボーイ》を含む希少なコレクターズ・アイテム
Unreleased Early Days 1947-1957 (So What)

 初期のマイルスを集大成した好企画盤。1枚のCDにドカンと29曲収録されている。録音時期は、1947年から57年までの約10年間。当然のことながら、古い音源だけに、なかには聞き苦しいものもあるが、そこは記録性及び希少性に免じて許してあげなければ、この種の発掘音源企画は成立しません。肝心の内容は、純粋な未発表音源もあれば、チャーリー・パーカーとの共演は過去にマイナー・レーベルからアナログで発売されていたものの、現在は入手困難なものであるとか、それはもう百花繚乱。

 ざっと収録曲とメンバーに触れておくと、1曲目から16曲目までは、チャーリー・パーカー時代のライヴ。録音時期は47年と48年となっている。ピアノはデューク・ジョーダン、ベースはトミー・ポッター、ドラムスはマックス・ローチ。そして17曲目の《ハーフ・ネルソン》は、そのパーカーも参加したディジー・ガレスピー・ビッグバンドのライヴ。つまりマイルス、パーカー、ガレスピーの揃い踏みというわけです。

 18曲目から24曲目までは、再びパーカー・クインテットのライヴだが、メンバーは、ピアノがアル・ヘイグ、ドラムスがロイ・ヘインズに交替している。51年1月19日、ニューヨークのホテル、ディプロマット内のボールルームにおける演奏。マイルスの存在感が急速に増していたことがわかる。とくに前述の40年代の演奏と比較すると一目瞭然。そして、マイルスが決して「ヘタ」ではなかったこともわかる。

 25曲目は、パリでのライヴ。これはお馴染みかもしれないが、共演がレスター・ヤング(テナー・サックス)というところが珍しくも泣かせる。上昇機運に乗るマイルスと下降線を描きはじめたレスターの、しかしながら心温まるインタープレイは、ジャズ史上の名シーンに数えられるだろう。

 26曲目から29曲目までの4曲が、このコンピレーション盤のハイライトかもしれない。一時的に存在したレギュラー・クインテットによる、ニューヨーク「バードランド」でのライヴ。4曲すべてが初登場ではないが、正真正銘の初登場になる《ネイチャー・ボーイ》は、おそらく大発掘賞の最有力候補ではないだろうか。ともあれ《ネイチャー・ボーイ》といえば、『ブルー・ムーズ』(55年録音)のオープニングを飾るナンバー。知る人ぞ知るの隠れ名演だが、マイルスのヴァージョンはその初演しか残されていないと思われていた。それがこうして、しかも「バードランド」でのライヴ・ヴァージョンが登場したのだから、うーん、やっぱりこの世界、来年も足を洗えません。

【収録曲一覧】
1 I Got Rhythm
2 Cool Blues
3 Ornithology
4 Dizzy Atmosphere
5 Wahoo
6 Groovin' High
7 I Can't Get Started
8 Dexterity
9 The Way You Look Tonight
10 All The Things You Are
11 52nd Street
12 Diggin' Diz
13 Embraceble You
14 The Chase
15 Drifting On A Reed
16 Groovin' High
17 Half Nelson
18 Billie's Bounce
19 Cool Blues
20 April In Paris
21 Ornithology
22 52nd Street
23 Caravan
24 Big Foot
25 Lady Be Good
26 All Of You
27 Four
28 Nature Boy
29 A Night In Tunisia

Miles Davis (tp) Bobby Jaspar (ts, fl) Tommy Flanagan (p) Paul Chambers (b) Philly Joe Jones (ds) and others.

1947-1957 (various places)