ドイツを代表する自動車メーカーで、販売台数首位をトヨタと争うフォルクスワーゲン(VW)。同社で排ガス規制をめぐる不正が発覚、環境大国ドイツのブランドをも大きく揺るがしている。
問題は、ディーゼルエンジン車の排ガス規制逃れ。不正ソフトを使い、検査時には窒素酸化物(NOX)の排出を基準値以下に抑えるが、走行時は基準値の最大40倍も排出していた。対象車両は全世界で1100万台に及ぶ。
今後、VWは多額の罰金や損害賠償訴訟に見舞われるだろう。BNPパリバ証券アナリストの中空麻奈氏の試算では、その額は130億~200億ドルになる見込みだ。
中空氏は、「財務状況がよいVWにとって大した額ではない」と言うが、デフォルト(債務不履行)のリスクが全くないとは言い切れない。
「今後の調査で不正の悪意性が高いとわかったり、欧州の他メーカーでも不正が発覚して業界全体の問題となったりしたら、VWの経営危機や業界再編につながる可能性もある」(中空氏)
欧州では、日本と違ってエコカー技術としてディーゼル車が幅広く普及している。ダイムラーなど他の欧州メーカーもディーゼル車に注力している。こうした自動車市場が一変するかもしれないと言うのは、国際エコノミストの今井澂氏だ。