覚醒剤と危険ドラッグ所持の疑いで逮捕された槇原敬之容疑者。1999年の1度目の逮捕から20年以上が経過していただけに、その衝撃は大きい。果たしていつから薬物を再開していたのか、その依存度はどの程度のものなのか、注目が集まっている。
そもそも「依存症」とは何なのか? 久里浜医療センターの精神科医長、中山秀紀氏の新刊『スマホ依存から脳を守る』から、スマホ依存を通した「依存症」についての解説をお届けする。
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■「快楽」と「不快」の同時進行
人は「快楽」を得るために依存物を使います。「快楽」を得ることによって、より「幸福」になろうとします。ところが依存物を使いすぎて依存症になると、依存物で「快楽」を得られる(正の強化)ものの「幸福」というゴールに至るのではなく、依存物を使わないときにはいつも「不快」(負の強化)が生じてしまうのです。
依存症の人はしばしば、依存物を使用する間は「快楽」を得られるので、それに満足して「幸福」になれると信じて使い続けます。しかし同時に、負の強化も進行していきます。そして実際には、いつの間にか、自らが依存症の負の強化によって「不快」になっていることに気づきにくくなります。
もちろん依存物をたくさん使用することによって、たとえばアルコール依存症の場合、多量飲酒によって肝臓が悪くなる、違法薬物やギャンブル依存症の場合にはお金がなくなる、人間関係が悪くなる、インターネット依存症やオンラインゲーム依存症の場合は学業成績が不振になるなど、依存症特有の悪影響によって「不快」になる場合もあります。それらの悪影響による「不快」解消のために、さらに依存物を使うこともあるでしょう。しかし世の中には肝臓が悪いことや、お金がないこと、人間関係が悪いこと、学業成績が不振になることをあまり気にしない人もいます。そういう人たちでも、依存症の負の強化によって脳内が「不快」になると、やはりその解消のために依存物から離れがたくなってしまうのです。
「でも、ちょっと待ってください」と、あなたは思うかもしれません。「楽しい(快楽を得られる)ことをたくさんしている人は、幸福なのではないでしょうか?」と。