AERA dot.で朝日新聞政治部の記者、野上祐さん(46)が連載する『書かずに死ねるか――「難治がん」と闘う記者』というコラムがお笑い芸人・ウーマンラッシュアワーの村本大輔さん(37)の目に留まり、番組や舞台に出演した野上さん。お笑い界の異端児と難治がん記者――。村本さんの「最後にペンを握って何を書くんですか?」という直球の質問に野上さんの答えは?
※中編よりつづく
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――政治ネタはしたくない、という芸人さんも多いのではないでしょうか。
村本:ある芸人が「政治ネタは言ってもウケない」と話していたことがあります。でも、「思ってもないことを言ってもウケへんわ」と思う。コラムの野上さんの話じゃないけど、芸人が「桜を見る会」に行ってて、政治を腐せるわけがないですよね。それが正しくても正しくなくても、近寄ってはいけないと思う。
野上:自分は政治記者だなと意識したのは、がんになった時です。知り合いの政治家が病院選択の手助けを申し出てくれたけれど、断りました。ここで借りを作ってしまうと、復帰した時に政治記者としてやっていけないと思った。自分が単に生物としてではなく、記者として生き延びようとしたことはよかったなと思っています。
村本:是枝(裕和)監督のやつみたいですね。権力とは少し距離を置くという。
野上:私ならば、感謝の気持ちが絶対に残ってしまうでしょう。でね、その後に相手を批判する記事を書くことがあった。もし借りを作っていたら書けなかったかなとも思うし、その資格はない記者だと思っていたかもしれない。
――海外では風刺画で政治を揶揄したり、自由ですよね。スタンダップ・コメディーもその一つです。
村本:日本のテレビは少しでも右か左に寄ると、取り合ってくれなくなる。タレントに触れられ慣れてないから、敏感なんです。野上さんに聞きたい。メディアはペンで監視役を示さないといけないわけじゃないですか。