目に見えない微生物(菌)がつくりだす食べ物を知っているかな? おいしくて体にもいい「発酵食」を科学的に学んでみよう。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』で紹介した、発酵食のスゴイところを特別に公開しよう。監修は東京農業大学名誉教授・小泉武夫さんだ。
【1.保存性が高まる】
冷蔵庫のない時代の人にとって、食品を長持ちさせることは重要な問題だった。発酵は、干物や塩漬けなどの保存方法の一つで、微生物の力を利用しているのがポイント。食物に付いた発酵菌がすごい勢いでどんどん増殖することによって、腐敗菌を寄せ付けないという効果があるんだよ。
すし(※注)の元祖「なれずし」を知っているかな?フナやマスなどの魚を塩漬けにし、桶の中にご飯と魚を交互に詰めて発酵させ、半年以上経ってから食べるという保存食。和歌山県新宮市にあるなれずしの店では、なんと30年以上も漬け込んだサンマのなれずしがあるという。
※注 酢飯とネタを一緒に握る「にぎりずし」は、現在のファストフードのようなものとして江戸時代に生まれた。
【2.栄養価がUP】
発酵食は味や香りが変わるだけでなく、栄養価が大幅にUPする。これは微生物がビタミンやアミノ酸など、人間が生きるのに欠かせない物質をつくりだしているからなんだ。例えば、大豆を発酵させる納豆は、ビタミンB2が6倍、貧血予防に効果的な葉酸が3倍になる。また、独特の粘りは「ムチン」といい、血糖値の上昇を防ぐ効果などがある。
さらに発酵食には、食べ物の消化や吸収を助けたり、おなかの調子を整えたり、がんの予防効果があるといわれるものも多い。発酵食がいかに優れた栄養食であるかがわかるね。
【3.おいしくなる】
発酵食はそれぞれ、独特の香りや深い味わい、風味を持つのが特徴。焼きたてのパンの香りや、だしのきいたみそ汁は、食欲がそそられ、心もほっと安らぐよね。
例えば、パンの主な材料は小麦粉と水、酵母。この酵母は生地に含まれる糖を食べて、おいしい香りの成分を出してくれる。また、みそづくりでもわかるように、米や大豆に含まれるでんぷんやたんぱく質は、それ自体には味もにおいもないけれど、発酵すると糖やアミノ酸になり、甘みやうまみ、香りや酸味が生まれる。
これから発酵食を口にするときは、ぜひその香りや味わいなどを楽しんでみよう。
(監修/東京農業大学名誉教授・小泉武夫)
※月刊ジュニアエラ 2017年2月号より