2017年1月20日に、アメリカ(米)の45代大統領に共和党のドナルド・トランプ氏(70)が就く。議員や州知事など政治の経験がなく、ビジネス界で活動してきた異色の大統領だ。移民やイスラム教徒、女性らへの差別的な発言も繰り返し、批判を浴びている。これまでとまったく違うタイプの大統領が、なぜ誕生するのか。アメリカや、世界、日本にどんな影響があるのか。トランプ氏の言動に注目が集まる。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞国際報道部・杉崎慎弥さんの解説を紹介しよう。
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ブランド店が立ち並ぶニューヨークの5番街に、トランプ氏が住む金ぴかのトランプ・タワーがそびえ立つ。デモ隊への対応や次期大統領一家の警護で、周辺にはたくさんの警察官が配置され、出入りも厳重に監視されている。まるで要塞のようだ。家賃は月数百万円ともいわれている。
トランプ氏は若いころから、父親の不動産業を手伝い、1980年代にアメリカ各地に次々とホテルやカジノを建てて「不動産王」と呼ばれるようになった。テレビ番組にも司会役で出演し、一躍有名人に。大統領選挙のたびに候補者として名前が挙がるようになった。
トランプ氏は議員や州知事、軍人など、公職の経験がないアメリカ史上初の大統領になる。現在70歳で、大統領に初当選した年齢として最高齢だ。
家族は、妻メラニアさん(46)がスロベニア出身の元モデル。離婚した2人の前妻との間に生まれた子を含め、長女イバンカさん、三男バロン君のほかに、2人の息子と1人の娘がいる。アメリカの経済誌によると、資産総額は推計で37億ドル(約3878億円)ともいわれる。
しかし、90年代には34億ドルの負債(借金)を抱え、商売で苦しいときもあった。著書『トランプ自伝』には、「求めるものを手に入れるまで、押して押して押しまくる」など実業家としての手法が記されている。こうした経験がトランプ氏の礎になっているようだ。
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