いつ起こるかわからないとされている南海トラフ巨大地震。次の大地震がいつくるのか、どの程度わかるのだろう? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』10月号で、防災科学技術研究所(防災科研)の林春男先生に地震予知について聞いてみた。
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――地震は予知できるの?
2、3日後に地震が起きるというような「予知」はまず無理だけど、「予測」はしているよ。今後30年以内に強い地震に見舞われる確率を予測し、発表しているんだ。ウェブサイト「地震ハザードステーション」で、キミが住む街の確率も調べられるよ。東京都47%、横浜市81%、静岡市68%……。
――知るのが怖くなる数字だね。地震の起こりやすさはどうやって調べるの?
地震は「同じ場所で」「一定の間隔で」「同じぐらいの規模で」繰り返し起こると地震学者は考えている。場所については、主に断層を調べることで、かなりわかってきているよ。どのぐらいの間隔で起きるかについては、海溝型地震では、大体の予測はできる。
――どうやって予測するの?
古文書など過去の記録から地震の周期を探るんだ。たとえば太平洋沖の南海トラフに沿って「東海」「東南海」「南海」と呼ばれる三つの震源域があり、100~200年おきに海溝型地震が起きているんだ。
――最後に起きたのは1946年か。100年おきだとして、100足すと2046年……あと30年ぐらいで次の地震が起きるかもしれないってこと!?
よくわかったね。しかも前回、東海地震は起きていないから、東海地震は、いつ起きてもおかしくないんだよ。
――それが静岡市の、地震の確率が高い理由なんだね?
そのとおりだよ。今、いちばん恐れられているのは、この三つの震源域の断層が同時に動くこと。南海トラフ地震と呼ばれ、最悪の場合、東日本大震災より大きいM9.1の地震が起きると予測されているんだ。
――内陸型の地震は予測できないの?
内陸型は1千年以上と周期がとても長いので、過去のデータが得にくく、予測が難しい。
規模の予測については、海溝型でも内陸型でも難しい。断層が一つだけ動くのか、隣り合う断層が一緒に動くのかは、地震が起きてみないとわからないからだ。
――地震が起きる確率が低い地域に引っ越そうかな。
どこに住んでも、安心はできないよ。たとえば4月に最大震度7の地震に襲われた熊本県益城町の、震度6弱以上の確率は8%だった。日本には大地震が起きる確率がゼロの地域はないんだ。
■地震の予測に使われる、さまざまな手法
<GPSを使って地殻の変動をキャッチ>
スマホやカーナビに使われるGPS(全地球測位システム)を使って、全国1300カ所で日本列島の地殻変動が観測されている。「電子基準点」を設置し、その正確な位置を人工衛星で計測し続けることで、どこにひずみが集中しているか知ることができる。
<断層のまわりを掘って地震の跡を探る>
内陸型地震の周期は1千年以上と長いため、古文書などはない。手掛かりになるのは活断層だ。地面を掘り断層面を露出させて年代を調べ、過去何万年の間に何回活動があったかを明らかにすれば、地震の周期と、次に地震が起こる時期を、大体予測することができる。
<古文書から過去の地震を知る>
17、18世紀の古文書はたくさんあるので、過去400年間の地震や津波を知る有力な手掛かりになる。年月日や時間のほか、起きた現象や被害の状況など、詳細な記録が残る。
※月刊ジュニアエラ 2016年10月号より