将来地震を起こすおそれのある危険な活断層は日本列島全域に2千以上ある。政府の地震調査委員会は主要な断層97を選んで地震規模の想定や発生確率を公表しているが、未知の活断層で起こる地震も相次いでいて、予知は難しく、日本のどの地域でも大地震が起こる可能性はあるといえる。
5月16日夜には、茨城県南部を震源とした最大震度5弱の地震が発生。気象庁は、熊本地震との直接的な関連や東日本大震災の余震説は否定。M7級の首都直下地震との関連はわからないとするが、「いつ何時起きてもおかしくない」と、首都圏に住む人々に警戒と防災対策を訴えている。(ジュニアエラ編集部)
【初めて実測された南海トラフの「ひずみ」】
5月16日夜に発生した茨城県南部の地震は、プレート境界型地震と考えられている。プレートとは地球を覆う厚さ100キロメートル前後の硬い岩板で、地球の表面は十数枚のプレートで覆われている。巨大なプレート同士が押し合うと、大きな力が働き、地震を起こす。日本列島の下には四つのプレートの境界があり、世界有数の「地震の巣」として知られている。
M8、9級の巨大地震の発生が心配されている「南海トラフ」は、ユーラシアプレートにフィリピン海プレートが沈み込む境界にある。ここで地震が起きると、広範囲に強い揺れや津波をもたらし、最悪約32万人の犠牲者が出ると想定されている。
5月23日、イギリスの科学誌「ネイチャー」電子版に、日本の海上保安庁(海保)による論文が掲載された。海保は観測器を海底に置き、南海トラフ沿い15カ所のプレートの境目の動きを測定。2006~15年度の動きを分析し、蓄積された「ひずみ」の分布図を作製した。海底の観測器による実測値を初めて使った図で、想定以上の大きなひずみも確認されたという。ひずみの場所はほぼ、政府が南海トラフ巨大地震の震源域として想定する範囲内だったが、想定外の場所にも大きいひずみが見つかっている。陸からの分析ではわからなかった部分を明らかにしたことで、今後の地震への影響や被害想定の研究に期待がもたれている。
※月刊ジュニアエラ 2016年7月号より