まず、学校に通う子どもたちのすべての母語で「こんにちは」「ありがとう」など、簡単なあいさつを書き出して、全員で覚えることにしました。「自分の母語をみんなの前で大きな声で言えて、うれしい!」という反応がありました。
次に、自分の親がどんな国から、なぜ日本に来たのか知るために、親の母国の特徴をまとめたものを貼り出しました。その過程で自分がなぜ日本にいるのかがわかるようになり、自分のルーツに自信がもてるようになったのです。
こうした授業は、日本人にもメリットがあります。さまざまな国の歴史や社会を、友達を通して知ることができるからです。また、子どものころから異なる文化をもつ人と触れ合っていると、まず対等に人を見て、あとから違いを見つけるような、器の大きい人になれます。
もし、身近にいる外国ルーツの人が困ったり、とまどったり、みんなと違うことをしていたら、どうしてなのか理由を聞いてみましょう。そして、違いを違いとして尊重するために、何ができるかをみんなで話し合いましょう。そんな「小さな気づき」の積み重ねができる人が増えれば、未来の日本はもっともっと、外国ルーツの人にとって住みやすい国になるはずです。
【日本は難民受け入れに冷たい国?】
日本に難民申請をする人は2014年は5千人いたが、日本の審査は非常に厳しく、同年に認定されたのはわずか11人。申請から決定までに1年近くかかり、認定後も、語学研修など日本で生活するための支援体制は十分ではない。
【難民とは?】
人権・宗教・国籍・政治的意見などを理由に、迫害を受ける恐れがあるため他国に逃れた人。日本は紛争から逃れただけの人を難民と認めていない。
(国士舘大学教授・鈴木江理子)
※月刊ジュニアエラ 2016年6月号より