3.リアクションやフィードバックは多めに

 特に幼児や小学生の学習において最も大事なのは、知識を得ることよりも大人の反応や応答です。自分が発信したことを受け取って何かを返してくれる、リアクションやフィードバックにこそリアルタイムな学びの価値があります。

 その辺りを忘れてしまうと、せっかくの学びを深める機会を逸してしまいます。オンラインを活用する際はいかにインタラクティブな学びにできるかが肝になると思います。

 オンラインのメリットもあります。全体を捉えにくい反面、一人一人との距離感が教室と比べてフラットなので、それを生かして、全員と同じように対話をすることがしやすくなります。私の場合は、音声だけでなく、チャットなどを通じた文字のやりとりも同時に扱うことで、個別フィードバックの機会を増やしています。

4.発信者は心理的ハードルを下げる

 最後はやはりこれに尽きると思います。ICT(情報通信技術)環境の差や、個人レベルの技術の差はもちろんあると思いますが、「伝えたいこと」を明確にさせ、多少の失敗は恐れず発信する。今は、発信者側も挑戦し、学び、アップデートするいい機会です。子どもたちは、勉強をやらせるだけで自分はやらない大人を軽蔑しますが、大人が挑戦して学ぶ姿を見せれば、必ずついてきます。オンラインのライブ授業はやるたびに多少の失敗やトラブルはつきものです。ですから、まずは「子どもに格好悪いところを見せたくない」という心理的ハードルを下げることが成功への第一歩です。

 私の塾では、私自身をはじめ、講師たちは皆塾講師以外の専門性を持っているパラレルワーカーです。哲学者やビックデータの専門家、科学者など。ダンサーやすし職人もいます。教える側こそ探究的に生きていないと探究的な授業は難しい、と考えているので、あえて多様なキャリアを持つ人たちに講師になってもらっています。

 今回、講師たちは思った以上に今の状況を受けいれ、淡々と自分のできることをこなしながら、オンライン授業を続けています。パラレルワーカーならではの柔軟な対応力を感じました。

 今ライブ授業をしなければならない先生方は、パラレルワーカーでない人がほとんどだと思います。しかし、少し発想を柔軟にしてチャレンジできれば、キャリアは関係ありません。

 今までやってきた授業をそのままオンラインにしようとすると、どうしたらよいのかが分からなくなってしまいます。重要なのは「何を使うか」ではなくて自分が関わることで生徒に「どうなってほしいのか」、そのために「ツールをどう活用するか」という視点です。ここに集中して、ゼロから授業をつくっていこうと思えば、心理的ハードルはだいぶ下がると思います。

 いずれにせよ、ポストコロナに向けて、教育はますます「人」と「方法」に向かうことは間違いないと思います。

 このような局面だからこそ、授業レベルもオンラインスキルも磨けるだけでなく、生徒と共に学習することを構造化できれば、一気に教育改革は現実味を帯びるのではないでしょうか。(構成=AERA with Kids編集部)

AERA with Kids (アエラ ウィズ キッズ) 2020年 春号 [雑誌]

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AERA編集部
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