一方、質量が太陽の約20倍もある赤色超巨星のベテルギウスの寿命は、1千万年程度と考えられている。太陽に比べればごく最近誕生したのに、あっという間に老年に達して温度が下がり、大きくふくらんだ状態になっているのだ。そして、赤色超巨星は、一生の最後に星全体を吹き飛ばすような大爆発を起こす。これを「超新星爆発」といい、爆発後の中心部には「中性子星」という小さい割にとても重い天体が残る。
●昼間でも明るく輝いたという超新星爆発も
超新星爆発を起こした星は超新星と呼ばれ、非常に明るく輝く。観測技術の発達した現代、超新星は宇宙のどこかで毎年発見されている。ただし、肉眼で見えるものは数百年に1個の割合でしか現れない。肉眼で見えた記録の残る超新星のうち、1604年に観測されたものは、夜空の金星を除くどの星よりも明るく見えたという。1054年に見えたおうし座の超新星は、23日間、昼間でも見えるほど明るく輝いたといわれている。この超新星の残骸は、かに星雲という天体になり、望遠鏡で観測できる。
こういう話を聞くと、きっと超新星を見たいと思うだろう。短い寿命のベテルギウスの明るさが急激に低下したと聞き、「超新星爆発が間近に迫っているからではないか?」と一部の天文ファンも期待した。
ただし、多くの天文学者は、今回の明るさの低下が直ちに爆発に結びつくとは考えていないようだ。再びベテルギウスが明るくなってきたとの報告もある。ベテルギウスがいつか超新星爆発を起こすことは、おそらく間違いない。ただし、それがいつ起こるかは、誰にもわからない。明日かもしれないし、10万年先かもしれない。
この機会に改めてベテルギウスを探して、星の一生に思いをはせてみよう。
(サイエンスライター・上浪春海)
※月刊ジュニアエラ 2020年5月号より

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