――日本政府は全員に一人10万円を給付すると決めたでしょ。それはどうして?

 景気が悪くなることがわかると、政府は国民の暮らしを守らないといけないと考えるんだ。政府はお金を持っている。税金を徴収しているし、国民から借金もできる。政府のお金を国民に配ることで、少しでも国民の暮らしが楽になり、景気がよくなることを狙っているんだね。ただ、配り方は難しいよ。新型コロナが与えたダメージは仕事によって違うからね。お店を休まなければならなくなった人などは収入がなくなるのだからダメージはとても大きい。でも、公務員や年金で生活している人などの収入は変わらず、ダメージは小さい。本当はダメージの大きい人にたくさん配るのが効果的なんだが、だれに配ってだれに配らないかの線引きは不公平感を生みやすく、時間もかかる。今は不公平感なく早く届けることが大事だということになり、国民一人あたりに10万円配るというわかりやすいやり方になったんだ。

――世界は今後、世界恐慌やリーマン・ショックのような経済状況になると聞いたけれど、世界恐慌やリーマン・ショックでどんなことが起きたの?

 世界の経済がすごく落ち込んだのは、最近では2008~09年にかけて起こったリーマン・ショックのときだ。アメリカで金融機関の破たんが相次ぎ、世界がパニックに陥り、大不況になったんだ。ただ、世界経済の予測をしている国際通貨基金(IMF)は、今回の経済危機をリーマン・ショックよりもっとひどかった世界恐慌以来の危機と言っているんだよ。世界恐慌とは、1929年にアメリカで始まり、30年代にかけて世界に広がった長くて深刻な大不況のことだ。日本でも失業者が街にあふれ、「大学は出たけれど」という就職難をあらわす言葉がはやったんだよ。世界恐慌は人々の暮らしを苦しくしただけでなく、世界の国々の経済的な対立を深め、第2次世界大戦につながったといわれている。世界恐慌のような大不況になると、社会全体が不安定になる可能性があるので恐ろしいんだよ。

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