数学の難問「ABC予想」を京都大学の望月新一教授が証明した。取材には応じていない教授だが、そのブログからは素顔がうかがえる。小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」7月号で、その成果に迫った。
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35年間数学者を悩ませてきた超難問「ABC予想」を、京都大学(京大)数理解析研究所の望月新一教授(51歳)が証明したと認められた。ノーベル賞級の業績ともいわれている。
ABC予想は、1、2、3、4……と無限に続く整数の問題だ。足し算した数と、かけ算した数の大きさを比べる一見単純な問題だが、整数の根本について明らかにする重要な問いだ。証明されると、ほかの難問も次々に解けるといわれ、影響の大きさから整数を牛耳る「番頭」のような存在だ。1985年にヨーロッパの数学者たちによって提示された。
望月教授は2012年、証明した論文を数学の専門誌に提出した。ただ、それは、一人で10年以上かけてつくった「宇宙際タイヒミュラー理論」という独創性の高い理論。4編646ページあり、初めて見る記号や数式にあふれ、「どこがわからないのかさえわからない」と数学者がお手上げ状態になる難しさだった。
理論を学ぶ勉強会がイギリスや京都などで開かれたり、望月教授の弟子が解説論文を出したりしたが、今も理解者は世界で10人程度だというから驚きだ。論文の計算や考え方に間違いがないか、複数の専門家が確認する検証に7年半かかり、4月3日に権威ある国際的な数学誌への掲載が発表された。
望月教授は経歴も輝いている。5歳からアメリカで暮らし、高校を2年で卒業。名門プリンストン大学を19歳で卒業し、32歳の若さで京大教授になった。一方、取材に応じることはなく、発表の会見にも姿を見せなかった。証明の感慨なども語らぬままだ。
ただ、個人ブログでは「本音」を語っている。人気アイドルグループ「欅坂46」の曲の歌詞が、自身の理論と似ていて感動したとして詳細に解説し、テレビドラマの感想や「数学愛」についても披露。望月教授を知る人は「とても親切だし、遊び心がある」と話している。
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