例えば、父親は地方の公立校出身で母親は中学校から私立に行っていたりするケース。母親は当然中学受験をさせたいと思うけれど、父親は「私立なんて行く必要はないだろう。会社だって役職につくのは公立出身者が多いし」と言ったり。それに対して母親は「やっぱり中高一貫行くと勉強の環境がよくて、いい仲間もできるよ」と言ったりする。

 まさにそれが常識と常識のすれ違い、ということです。私も進路指導をしていたとき、夫婦の意見が一致しない家庭を山ほど見てきました。

 それまでにきちんと話し合うことをしてきていないと、一方的に「俺はこう思う」と自分の常識だけを主張して、それが正しいと疑わなかったりする。すり合わせなきゃいけない、ということすらわかっていない。そうなると、「あの人には言ったところでムダ」となり、ますます話し合いから遠ざかる。だんだん亀裂が深くなると、もはや話し合うこと自体がムリ、という恐ろしい将来になってしまうのです。

 今まで夫婦で話し合いをあまりしてこなかった人にとってはとても耳の痛い話かもしれません。

 でも、今からでも遅くない。むしろ今こそ話し合いのチャンスだと思うんです。このコロナの時代だからこそ、話し合うべき問題が新たに出てきている。例えば今後もコロナが収まらなかったとき、学校は今まで通り行かせるのか、休ませるのもありなのか。塾や習い事の合宿などは出席させるべきか、否か、とか。危機的状況こそ話し合いのチャンスだと思います。

 とはいえ、夫婦の話し合いは難しいのも事実。

 たとえ結婚して、同じ家に住んでいても男と女は完全に分かり合うことはできない。だからといって完全に諦めるのではなく、無理に合わせるのでもなく、まずは「そういうものだ」とお互いに認めることが大事。

 つまり夫婦で意見が違うなら違うで、相手はどうしてそう考え、行動するのかを考えてみる。相手を否定する前に異性の言動の特徴を知ったり、自分を客観的に見てみるようにしてください。この二つがあるだけで夫婦のコミュニケーションはグンと高まります。(構成=AERA with Kids編集部)

※「AERA with Kids秋号」では高濱正伸先生が特別編集長になって「子育ての軸」の作り方を具体的に指南。夫婦のコミュニケーションの取り方なども具体的に解説しています。

AERA with Kids (アエラ ウィズ キッズ) 2020年 秋号 [雑誌]

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AERA編集部
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