私立小学校というと「学費が高い」「お受験が大変」といったイメージを持つ人も多いだろう。一方、英語教育やICT教育に力を入れる私立小学校への注目度は高く、「一部の富裕層の子どもたちが通うのが私立小、という時代は終わった」と小学校受験の専門家は指摘する。現在発売中の『AERA English特別号 英語に強くなる小学校選び2021』(朝日新聞出版)では、全国私立小学校205校に独自調査を実施。その結果をもとに、英語教育、入試、学費などから、私立小学校のいまを読み解く。
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今年度から新しい学習指導要領が全面施行され、すべての小学校で英語(外国語)の授業が行われている。3、4年次で週1コマ(年35時間)、5、6年次で週2コマ(年70時間)の授業が必修化された。
以前から私立小学校の多くは英語教育を積極的に実施していたが、必修化を受け、授業時間を増やす傾向にある。本誌の調査をもとに2016年と2020年の週当たりの英語授業のコマ数を比較すると、1年次で1~2コマの小学校が71.3%から62.4%に減少。一方で3コマ以上と回答した学校が22.1%から34.7%と、10ポイント以上増えている。
複数の私立小で英語教育のコンサルティングにかかわる、ジャパンリード株式会社の安本真樹さんはこう語る。
「必修化を受けて、私立小では公立小のコマ数プラス1コマをめざす動きがあります。つまり1、2年次に週1コマ、3、4年次に2コマ、5、6年次に3コマが目安です」
最近では、昨年開校した東京農業大学稲花小学校が1年次から7時間授業を始め、英語も1年次から週5コマを設定していることが注目されている。
「これからは土曜授業を実施したり、タブレットを用いた自宅学習でリスニングを勉強させたりして、多くの学校が英語を学ぶ時間を増やしていくと思われます」(安本さん)
付属校を持たないなど外部中学への受験を重視する私立小のなかには、高学年になると受験科目にない英語の授業時間を減らすところもあった。だがこの流れも変わりそうだ。
「小学校の主要教科はこれから国算理社の4教科に英語を加えた5教科になるので、中学入試にも英語が入ってくるからです。現在の5年次が受験する22年度入試では英語が選択科目になり、3年次が受験する24年度入試からは国算英の3教科を必修科目にする中学が増えるでしょう。特に関西はチャレンジ精神が強く、新しいことが好きなので関東よりも早く取り入れる可能性があります」(同)
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